祖先の背中の肥大化が昆虫の翅を生んだ -150年来の昆虫翅進化の謎に迫る-

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 大出高弘 農学研究科助教、三戸太郎 徳島大学教授、新美輝幸 基礎生物学研究所教授の研究グループは、フタホシコオロギの翅づくりの過程を調べることで、昆虫の翅進化の謎に迫りました。

 昆虫には、始祖鳥のような翅進化の中間段階を示す決定的な化石が見つかっておらず、翅の起源をめぐる議論は150年以上続いてきました。提唱されてきた仮説は背板起源説/側板起源説/複合起源説の3種類に収斂しますが、いずれの説も決め手を欠く状況です。本研究は、祖先的な発生様式を示すフタホシコオロギの翅づくりの過程を調べることで、この状況を打破することを目指しました。本研究グループは、ゲノム編集や外科手術などの手法を駆使することによって、側板ではなく、背板の細胞がコオロギの翅づくりに主導的な役割を果たすことを明らかにしました。さらに、背板を爆発的に肥大化させる細胞の成長シグナルを特定することに成功しました。これらの成果は、祖先無翅昆虫の背中の縁が、成長シグナルの活性の変化によって肥大化することで翅が進化したという背板起源説に近い進化シナリオを支持します。

 本研究成果は、2022年2月21日に、国際学術誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。

本研究の概要図
図:本研究の概要図
研究者情報
書誌情報

【DOI】https://doi.org/10.1038/s41467-022-28624-x

【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/268238

Takahiro Ohde, Taro Mito, Teruyuki Niimi (2022). A hemimetabolous wing development suggests the wing origin from lateral tergum of a wingless ancestor. Nature Communications, 13:979.