磁石の中の竜巻(スキルミオンひも)の三次元形状の可視化に成功 -新しい磁気情報処理手法の開拓に期待-

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 小野輝男 化学研究所教授、関真一郎 東京大学准教授、鈴木基寛 関西学院大学教授らの研究グループは、磁性体中の電子スピンが作る竜巻構造「スキルミオンひも」の三次元形状を可視化することに、世界で初めて成功しました。

 スピンの渦巻きは、二次元系では粒子のように、三次元系ではひものように振る舞うことが理論的に予想されていますが、後者の実験的な観測は、これまで非常に困難であると考えられてきました。本研究では、CTスキャンで利用されるX線トモグラフィーの原理を応用し、さまざまな角度から観測した二次元透過像を合成することにより、数百ナノメートルの直径のスキルミオンひもの三次元形状を直接観察することに成功しました。スキルミオンひもは、超高密度な情報担体として近年大きく注目されており、その三次元空間における振る舞いを明らかにすることで、外場による効率的な制御手法の解明や、新しい磁気情報処理手法の開拓につながることが期待されます。

 本研究成果は、2021年11月12日に、国際学術誌「Nature Materials」のオンライン版に掲載されました。

本研究のイメージ図(磁性体中の電子スピンが竜巻状に整列したスキルミオンひもの模式図(左)と、X線トモグラフィー測定によって実験的に観測されたスキルミオンひもの三次元形状(右))
図:本研究のイメージ図(磁性体中の電子スピンが竜巻状に整列したスキルミオンひもの模式図(左)と、X線トモグラフィー測定によって実験的に観測されたスキルミオンひもの三次元形状(右))
研究者情報
書誌情報

【DOI】https://doi.org/10.1038/s41563-021-01141-w

S. Seki, M. Suzuki, M. Ishibashi, R. Takagi, N. D. Khanh, Y. Shiota, K. Shibata, W. Koshibae, Y. Tokura, T. Ono (2022). Direct visualization of the three-dimensional shape of skyrmion strings in a noncentrosymmetric magnet. Nature Materials, 21(2), 181–187.

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