「富岳」を用いた宇宙ニュートリノの数値シミュレーションに成功 -2021年ゴードン・ベル賞ファイナリストに選出-

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 田中賢 基礎物理学研究所特定研究員、吉川耕司 筑波大学講師、吉田直紀 東京大学教授の研究グループは、ブラソフシミュレーションと呼ばれる全く新しい手法を世界で初めて採用し、スーパーコンピュータ「富岳」の全システムを用いて宇宙大規模構造におけるニュートリノの運動に関する大規模数値シミュレーションを実行することに成功しました。

 ブラソフシミュレーションは、従来の計算手法(N体シミュレーション)に比べて、ノイズのない数値シミュレーションを実行することが可能ですが、計算量や必要なメモリ容量がかなり大きくなることが問題でした。本研究では、革新的な計算アルゴリズムと「富岳」に最適化したコーディング手法と並列化手法を用いて、90%を超える並列化効率を達成し、さらに、富岳の全システムを用いた数値シミュレーションによって、計算領域を約400兆個ものメッシュに分割した世界最大のブラソフシミュレーションを実施することに成功し、N体シミュレーションによる過去最大規模のニュートリノの数値シミュレーションと同等規模の数値シミュレーションに要する時間を約10分の1に短縮することができました。

 なお、本研究論文は、スーパーコンピュータを用いた科学・技術分野の研究の中で、その年に最も顕著な成果を上げた研究グループに与えられる米国計算機学会のゴードン・ベル賞の最終候補(ファイナリスト)に選出されました。ゴードン・ベル賞の最終発表は米国ミズーリ州セントルイスのアメリカズセンター及びオンラインで開催される国際会議において、現地時間11月18日12時30分より行われます。

本研究の数値シミュレーションで得られた宇宙大規模構造におけるダークマター(CDM)とニュートリノの空間分布
図:本研究の数値シミュレーションで得られた宇宙大規模構造におけるダークマター(CDM)とニュートリノの空間分布
研究者情報
研究者名
田中賢
書誌情報

【DOI】https://doi.org/10.1145/3458817.3487401

Kohji Yoshikawa, Satoshi Tanaka, Naoki Yoshida (2021). A 400 trillion-grid Vlasov simulation on Fugaku supercomputer: large-scale distribution of cosmic relic neutrinos in a six-dimensional phase space. Proceedings of the International Conference for High Performance Computing, Networking, Storage and Analysis, SC '21:5.