榎戸輝揚 理学研究科准教授、青山有未来 理化学研究所理研スチューデント・リサーチャーM(兼:東京理科大学修士課程学生)、玉川徹 同主任研究員(兼:同室長)、三原建弘 同専任研究員、土肥明 同基礎科学特別研究員、髙橋拓也 同研修生(兼:東京理科大学修士課程学生)、岩切渉 千葉大学助教、武田朋志 広島大学日本学術振興会特別研究員(兼:理化学研究所客員研究員)らの国際共同研究グループは、理化学研究所のキューブサット(CubeSat)X線衛星NinjaSat(ニンジャサット)と全天X線監視装置MAXI(マキシ)を用いて、新天体MAXI J1752-457(以下「MAXI J1752」)からのX線増光を捉え、それが中性子星の表面で発生する爆発的な核融合が引き起こすX線バーストであり、これまでに観測された約120個のX線バーストを起こす天体の中でも特に珍しい特大爆発「スーパーバースト」を起こす天体であると明らかにしました。スーパーバーストを起こす天体は、MAXI J1752を含め17個しか知られていません。
今回の観測により、NinjaSatミッションの目的の一つである「MAXIが発見した新天体をNinjaSatで追跡観測」を実現しました。さらに、理化学研究所の理論研究者らも参加して観測現象の解釈を行いました。
新天体MAXI J1752からのX線増光はMAXIが2024年11月に捉えました。MAXIによる発見から約2.5時間後、本国際共同研究グループはNinjaSatでの観測を開始し、X線が減衰して検出限界より暗くなるまでの様子を8日間にわたり観測しました。観測的特徴からスーパーバーストと解釈できたことで、MAXI J1752は中性子星を含む連星系と推定できました。このようなスーパーバーストを発生直後から観測した例は珍しく、核融合で温められた星表面が冷却していく様子を明らかにしました。
本研究成果は、2025年6月20日に、国際学術誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載されました。

「突発的に明るくなるトランジェント天体が宇宙観測でたくさん見つかっており『活動的な宇宙の姿』が最先端の天文学の潮流の一つです。多数見つかる天体をすべて大型衛星でフォローアップのは難しく、手で持てるサイズのキューブサット衛星で観測して科学論文が書ける時代になってきたことに感銘を受けています。これから、大学院生が参加してキューブサット衛星での天体観測ができる時代を引き寄せていきたいと考えています。」(榎戸輝揚)
【DOI】
https://doi.org/10.3847/2041-8213/addd00
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/294859
【書誌情報】
Amira Aoyama, Teruaki Enoto, Takuya Takahashi, Sota Watanabe, Tomoshi Takeda, Wataru Iwakiri, Kaede Yamasaki, Satoko Iwata, Naoyuki Ota, Arata Jujo, Toru Tamagawa, Tatehiro Mihara, Chin-Ping Hu, Akira Dohi, Nobuya Nishimura, Motoko Serino, Motoki Nakajima, Takao Kitaguchi, Yo Kato, Nobuyuki Kawai, (NinjaSat collaboration) (2025). Thermonuclear Superburst of MAXI J1752-457 Observed with NinjaSat and MAXI. The Astrophysical Journal Letters, 986, 2, L29.