人工クモ糸の物性を劇的に改善する新物質を発見 -新素材開発に期待-

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 沼田圭司 工学研究科教授は、河野暢明 慶應義塾大学特任講師、荒川和晴 同准教授の研究グループ、理化学研究所環境資源科学研究センター、Spiber株式会社と共同で、ジョロウグモ亜科4種のゲノムを決定した上でマルチオミクス解析を実施し、研究対象のクモ糸がこれまで考えられていた以上に複雑な複合素材であることを明らかにしました。

 さらに、新規同定されたクモ糸に含まれるタンパク質の中から、人工クモ糸材に配合することで材料の物理特性を2倍以上に向上させることができるタンパク質「SpiCE-NMa1」を発見しました。この成果は、今後の人工タンパク素材開発の促進に大きく貢献すると考えられます。

 本研究成果は、2021年7月27日、国際学術誌「PNAS(米国科学アカデミー紀要)」のオンライン版に掲載されました。

オミクス解析に用いた4種のジョロウグモ近縁種とそのクモ糸含有タンパク質
図:オミクス解析に用いた4種のジョロウグモ近縁種とそのクモ糸含有タンパク質
研究者情報
書誌情報

【DOI】https://doi.org/10.1073/pnas.2107065118

Nobuaki Kono, Hiroyuki Nakamura, Masaru Mori, Yuki Yoshida, Rintaro Ohtoshi, Ali D. Malay, Daniel A. Pedrazzoli Moran, Masaru Tomita, Keiji Numata, Kazuharu Arakawa (2021). Multicomponent nature underlies the extraordinary mechanical properties of spider dragline silk. Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS), 118(31):e2107065118.