小川誠司 医学研究科教授(兼・高等研究院ヒト生物学高等研究拠点(ASHBi)主任研究者)、佐伯龍之介 同博士課程学生、桃沢幸秀 理化学研究所チームリーダー、村上善則 東京大学教授、宮野悟 東京医科歯科大学M&Dデータ科学センター長(東京大学名誉教授)らの研究グループは、クローン性造血の臨床予後への影響を解明しました。
血液がんの前がん病変であるクローン性造血は、血液がんのみならず心血管疾患のリスク上昇とも関連し、近年注目が集まっています。過去の研究で、クローン性造血は遺伝子変異とコピー数異常(Copy number alterations:CNA)という2種類のゲノム異常で引き起こされることが報告されました。しかし、両方の異常を同時に調べた研究は存在しないため、その関係性はよくわかっていませんでした。
今回、本研究グループは、バイオバンク・ジャパン(BBJ)に登録された約1万人の被験者についてクローン性造血の統合解析を実施しました。その結果、(1)クローン性造血では遺伝子変異とCNAが高頻度に共存すること、(2)両者が共存すると血液腫瘍・心血管疾患のリスクが有意に上昇すること、などを解明しました。今回の研究結果は、クローン性造血に基づく予後予測の重要な指標となることが期待されます。
本研究成果は、2021年7月9日に、国際学術誌「Nature Medicine」のオンライン版に掲載されました。
【DOI】https://doi.org/10.1038/s41591-021-01411-9
【KURENAIアクセスURL】http://hdl.handle.net/2433/264481
Ryunosuke Saiki, Yukihide Momozawa, Yasuhito Nannya, Masahiro M. Nakagawa, Yotaro Ochi, Tetsuichi Yoshizato, Chikashi Terao, Yutaka Kuroda, Yuichi Shiraishi, Kenichi Chiba, Hiroko Tanaka, Atsushi Niida, Seiya Imoto, Koichi Matsuda, Takayuki Morisaki, Yoshinori Murakami, Yoichiro Kamatani, Shuichi Matsuda, Michiaki Kubo, Satoru Miyano, Hideki Makishima, Seishi Ogawa (2021). Combined landscape of single-nucleotide variants and copy number alterations in clonal hematopoiesis. Nature Medicine. 27, 1239-1249.