明和政子 教育学研究科教授、河井昌彦 医学研究科准教授(病院教授)、今福理博 武蔵野大学准教授らの研究グループは、修正齢6・12・18ヶ月の早期産児と満期産児を対象に、社会性発達を評価する課題を縦断的に行い、発達予後を追跡調査しました。その結果、修正齢6・12・18ヶ月にかけて早期産児は満期産児に比べて人への注意が弱く、また、人の視線を追う頻度も少ないことがわかりました。さらに、人への注意が弱い乳児ほど自閉症の早期スクリーニングで陽性と判別されやすい、他者の視線を追う頻度が少ない乳児ほど語彙の獲得が遅い、といった新たな事実を見出しました。
日本では世界の国々と同様、早期産(在胎週数22週から37週未満)・低出生体重(出生体重2500g未満)での出生率が増加しています。最近行われた欧米の大規模コホート(長期縦断)調査では、早産児・低出生体重児は、就学期までに自閉スペクトラム症(以下、自閉症)等の発達障害と診断されるリスクが、満期産児と比べて2~4倍も高いことが示されています。しかし、彼らが抱える発達のリスク、とくに社会性発達のリスクをどのくらい早期から特定することができるかについては解明されていませんでした。
本研究の成果により、乳児期に現れる社会的注意の個人差が、認知発達のリスクを評価する「行動指標(マーカー)」となる可能性が示されました。
本研究成果は、2021年4月15日に、国際科学誌「Infancy」のオンライン版に掲載されました。
【DOI】https://doi.org/10.1111/infa.12402
Masahiro Imafuku, Masahiko Kawai, Fusako Niwa, Yuta Shinya, Masako Myowa (2021). Longitudinal assessment of social attention in preterm and term infants: Its relation to social communication and language outcome. Infancy, 26(4), 617-634.