タンパク質間相互作用の不可逆阻害に成功 -抗ガン剤開発のための新しい戦略-

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 浜地格 工学研究科教授、田村朋則 同講師、上田毅 同博士課程学生(研究当時)らの研究グループは、ガンの発生に関与するタンパク質間相互作用を強力に阻害する不可逆阻害剤を新たに開発しました。

 タンパク質の多くは生体内で他のタンパク質と相互作用しながらその機能を発揮しており、タンパク質間相互作用(protein-protein interaction:PPI)を制御できる小分子阻害剤は生命現象の理解や疾病の治療に有用です。しかし、一般に広く浅いPPI表面に小分子阻害剤は強く結合できないため開発が難しく、また薬効が低いという課題がありました。このような背景のもと、本研究グループはN-アシル-N-アルキルスルホンアミド(NASA)と呼ばれる反応基を阻害剤分子に組み込むことで、「一度くっついたら離れない」PPI不可逆阻害剤の開発に成功しました。本研究では、ガン化に関与するPPIとして重要なHDM2(human double minute2)-p53 相互作用を標的としてNASA型不可逆阻害剤を開発し、その薬効が従来の阻害剤よりも強力かつ長時間持続することを実証しました。NASA反応基は他の様々な種類の阻害剤設計に適用可能であり、今後、PPI不可逆阻害剤開発のための一般性の高い戦略として創薬研究を加速することが期待されます。

 本研究成果は、2021年03月19日に、国際学術誌「Journal of the American Chemical Society」のオンライン版に掲載されました。

本研究の概要図
図:本研究の概要図
書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1021/jacs.1c00703

Tsuyoshi Ueda, Tomonori Tamura, Masaharu Kawano, Keiya Shiono, Fruzsina Hobor, Andrew J. Wilson, and Itaru Hamachi (2021). Enhanced Suppression of a Protein–Protein Interaction in Cells Using Small-Molecule Covalent Inhibitors Based on an N-Acyl-N-alkyl Sulfonamide Warhead. Journal of the American Chemical Society.