葉緑体との相互作用におけるミトコンドリア運動を発見 -相互作用の制御による効率的な物質代謝の可能性に期待-

ターゲット
公開日

 沼田圭司 工学研究科教授(理化学研究所チームリーダー)、及川和聡 同特定講師、児玉豊 宇都宮大学教授らの研究グループは、植物細胞内のミトコンドリアが見せる特異的運動形態“Wiggling(小刻みな揺れ)”に注目して、Wigglingがミトコンドリアと葉緑体との物理的相互作用に関与することを世界で初めて発見しました。

 多くの真核生物の細胞内では、異なる性質のオルガネラ(細胞小器官)が動的に相互作用を行い物質代謝に関与します。一般的にミトコンドリアは植物細胞内で、アクチン繊維上を直線的に移動することが知られています。本研究では、シロイヌナズナ葉肉細胞内におけるミトコンドリア運動を、共焦点レーザー顕微鏡により高速撮影しました。ミトコンドリアの移動距離、角度、速度の詳細な解析を行うことで、直線的な運動とは異なる“Wiggling”が葉緑体との相互作用に相関することを明らかにしました。これらの知見は、ミトコンドリアと葉緑体間で行われる物質代謝の仕組みの解明に寄与する重要な発見であると期待されます。

 本研究成果は、2021年3月5日に、国際学術誌「Communications Biology」に掲載されました。

本研究の概要図
図:本研究の概要図
研究者情報
書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s42003-021-01833-8

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/262142

Kazusato Oikawa, Takuto Imai, Chonprakun Thagun, Kiminori Toyooka, Takeshi Yoshizumi, Kazuya Ishikawa, Yutaka Kodama & Keiji Numata (2021). Mitochondrial movement during its association with chloroplasts in Arabidopsis thaliana. Communications Biology, 4:292.