奥野恭史 医学研究科教授(理化学研究所グループディレクター)、荒木望嗣 同准教授、松本篤幸 理化学研究所研究員、寺山慧 横浜市立大学准教授、加藤貴之 大阪大学教授らの研究グループは、AI技術の一種である深層学習と分子動力学(MD)計算を組み合わせることで、クライオ電子顕微鏡(cryo-EM)で計測される立体構造データのみから、タンパク質の運動性情報(柔らかさ)を直接抽出する新たな手法の開発に成功しました。
近年のcryo-EMの目覚ましい技術発展により、巨大かつ複雑なタンパク質の立体構造が明らかになってきています。しかし、それらの運動性を取得することは高度な計算や実験でも困難です。
今回、本研究グループは、このようなタンパク質の運動性を、cryo-EMの計測データのみから原子レベルで簡便・迅速に推定できる画期的なAI「Dynamics Extraction From cryo-EM Map;DEFMap」を開発しました。これによって、これまで解析が困難であった生体高分子の運動性が明らかになり、機能メカニズムに対する新たな知見の発見につながると考えられます。また、本手法は超巨大なウイルス粒子などにも適用することが可能です。
本研究成果は、タンパク質やDNAなどの生体高分子の運動性を解析する新たなアプローチを提供するものであり、生命科学の進展や医薬品開発への貢献が期待できます。
本研究成果は、2020年2月5日に、国際学術誌「Nature Machine Intelligence」のオンライン版に掲載されました。
【DOI】 https://doi.org/10.1038/s42256-020-00290-y
Shigeyuki Matsumoto, Shoichi Ishida, Mitsugu Araki, Takayuki Kato, Kei Terayama & Yasushi Okuno (2021). Extraction of protein dynamics information from cryo-EM maps using deep learning. Nature Machine Intelligence, 3, 153-160.