スズ原子核の表面でアルファ粒子を発見 -中性子星の構造とアルファ崩壊の謎に迫る-

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 銭廣十三 理学研究科准教授、ザイホン・ヤン 理化学研究所基礎科学特別研究員(研究当時)、上坂友洋 同室長、田中純貴 ドイツ・ダルムシュタット工科大学特別研究員(研究当時)、民井淳 大阪大学准教授、宮崎大学、東北大学、大阪市立大学、日本原子力研究開発機構らの研究グループは、RCNPサイクロトロン施設の高分解能磁気分析装置を用いた実験により、スズ(Sn)同位体の原子核表面に存在するアルファ粒子、つまりヘリウム-4原子核(4He、陽子数2、中性子数2)を発見しました。

 本研究成果は、中性子星の質量と大きさの関係を与えるパラメータの決定に影響を与え、かつアルファ崩壊の原理解明につながる発見であり、原子核物理学全領域の研究開発に貢献することが期待できます。

 これまで、重い原子核の表面にアルファ粒子が存在することは理論的な仮説に過ぎず、その当否は不明のままでした。

 今回、国際共同研究グループは、RCNPサイクロトロンで得られる4億電子ボルトの陽子ビームを四つのスズ標的(112Sn、116Sn、120Sn、124Sn)に入射し、アルファ粒子をたたき出す「ノックアウト反応実験」を行いました。たたき出されたアルファ粒子と散乱された陽子を高精度で分析した結果、アルファ粒子がスズ原子核の表面に存在する証拠を得たと結論づけました。

 本研究成果は、2021年1月15日に、国際学術誌「Science」のオンライン版に掲載されました。

原子核表面のアルファ粒子とノックアウト反応の概念図(赤球が陽子、青球が中性子)
図:原子核表面のアルファ粒子とノックアウト反応の概念図(赤球が陽子、青球が中性子)
研究者情報
書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1126/science.abe4688

Junki Tanaka, Zaihong Yang, Stefan Typel, Satoshi Adachi, Shiwei Bai, Patrik van Beek, Didier Beaumel, Yuki Fujikawa, Jiaxing Han, Sebastian Heil, Siwei Huang, Azusa Inoue, Ying Jiang, Marco Knösel, Nobuyuki Kobayashi, Yuki Kubota, Wei Liu, Jianling Lou, Yukie Maeda, Yohei Matsuda, Kenjiro Miki, Shoken Nakamura, Kazuyuki Ogata, Valerii Panin, Heiko Scheit, Fabia Schindler, Philipp Schrock, Dmytro Symochko, Atsushi Tamii, Tomohiro Uesaka, Vadim Wagner, Kazuki Yoshida, Juzo Zenihiro, Thomas Aumann (2021). Formation of α clusters in dilute neutron-rich matter. Science, 371(6526), 260-264.