心臓が左右非対称になる仕組みを解明 -細胞集団運動によるダイナミックな形のリモデリング-

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川平直史 医学研究科博士課程学生、 森下喜弘 理化学研究所 チームリーダー、大塚大輔 同上級研究員らの研究グループは、心臓の初期発生で見られる左右非対称の「ループ状構造」が、心臓を作る「細胞そのものの再配列」という内因的かつ動的な要因により形成されることを明らかにしました。

今回、本研究グループは、発生のある時刻での形から次の時刻で見られる心臓の形の変化の過程を詳細に追跡し、その背後にある細胞プロセスの解明を目指しました。その結果、「心筒」と呼ばれる原始心臓内の組織が、左右で異なる方向に伸長することで左右非対称のループ状構造が形成されること、そしてその主な要因が特に右側の心筋細胞集団が特定方向に再配列するためであることを突き止めました。これは、従来の心臓形成モデルが前提とした、空間的な制約や外部組織からの細胞流入ではなく、心臓を構成する細胞の「集団運動」が左右非対称な心臓を形作ることを示した重要な発見です。

本研究成果は、「臓器の形がどのように作られるのか」という生物学上の根本問題を、実験と理論の融合研究、および組織と細胞という異なる階層間の定量比較解析で解き明かしたものです。今後、同様の解析が、心臓以外の臓器や、先天性疾患・奇形の発生機序の解明に応用されることが期待されます。

本研究成果は、2020年 3月18日に、 国際学術誌「Cell Reports」のオンライン版に掲載されました。

図: 発生初期の心臓の外形変化と細胞の軌道計測に基づく組織変形動態の再構成

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.celrep.2020.02.071

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/250778

Naofumi Kawahira, Daisuke Ohtsuka, Naoki Kida, Ken-ichi Hironaka, Yoshihiro Morishita (2020). Quantitative Analysis of 3D Tissue Deformation Reveals Key Cellular Mechanism Associated with Initial Heart Looping. Cell Reports, 30(11), 3889-3903.e5.