食品成分がmRNAのスプライシングを調節することを解明 -フラボノイドによるがん予防の可能性-

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増田誠司 生命科学研究科准教授、渋谷恭之 名古屋市立大学教授らの研究グループは、食品成分中にメッセンジャーRNA(mRNA)のスプライシングを制御する活性があれば、がんの予防に役に立つ可能性があるということに着目し、スプライシングを阻害できるような成分を食品中から探索した結果、ポリフェノールの仲間のフラボノイドに属するアピゲニンとルテオリンが効果的にスプライシングを調節することを見つけました。これらは食品の中ではパセリやセロリに多く含まれている成分です。

次に、アピゲニンとルテオリンが細胞の中でどのように働いているかについて調べたところ、スプライシングを行うスプライソソームの中のSF3B1という因子に結合して、様々なmRNAのスプライシングパターン(選択的スプライシング)を変えていることがわかりました。これは食品成分としては初めての知見となります。また、正常細胞よりもがん細胞に対して、より増殖を阻害することもわかりました。

これまでは、マウスに移植したがん細胞の増殖をアピゲニンやルテオリンで抑制できることが知られていましたが、今回の発見は、これらフラボノイドががん細胞の増殖を抑制できる根拠となる成果だといえます。このような化合物を含む食品の摂取によってがんの予防が可能かどうかについては、今後研究を進めることが必要です。

本研究成果は、2019年11月20日に、国際学術誌「iScience」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究の概要図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.isci.2019.11.033

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/244877

Masashi Kurata, Naoko Fujiwara, Ken-ichi Fujita, Yasutaka Yamanaka, Shigeto Seno, Hisato Kobayashi, Yusaku Miyamae, Nobuyuki Takahashi, Yasuyuki Shibuya, Seiji Masuda (2019). Food-Derived Compounds Apigenin and Luteolin Modulate mRNA Splicing of Introns with Weak Splice Sites. iScience, 22, 336-352.