京都大学発の薬剤「KUS121」が心筋梗塞サイズを縮小することを解明 -再灌流障害を抑制する新規治療法-

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木村剛 医学研究科教授、尾野亘 同准教授、井手裕也 同特定助教、垣塚彰 生命科学研究科教授らの研究グループは、マウス心筋梗塞モデルを用いて、本学で開発された薬剤であるKUS121(Kyoto University Substance 121)の投与実験を行ったところ、梗塞サイズが減少し、心機能の改善が認められることを解明しました。 また、心臓組織でのATP (アデノシン三リン酸) が速やかに回復することやERストレス(小胞体ストレス)も低下することも分かりました。さらに、よりヒトに近い、ブタ心筋梗塞モデルに対してKUS121を冠動脈内に投与したところ、用量依存的に梗塞サイズが減少しました。

急性心筋梗塞の治療法はカテーテルによる治療(経皮的冠動脈インターベンション:PCI)のみでしたが、それでも完全に心筋梗塞を無くすことはできません。また効果的な治療薬はこれまでにありませんでした。

VCP(valosin-containing protein:バロシン含有タンパク質)は、ATPase(ATPを加水分解する酵素)活性を有し、細胞内の異常タンパク質の処理などを担うタンパク質です。KUS121は、このVCPのATPase活性のみを低下させることを目的として本学で開発されました。

今後、本研究グループは、 本薬剤を新規の急性心筋梗塞治療薬として、臨床応用へ向けた開発を行う予定です。

本研究成果は、2019年10月29日に、国際学術誌「JACC: Basic to Translational Science」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究の概要図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.jacbts.2019.06.001

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/244444

Yuya Ide, Takahiro Horie, Naritatsu Saito, Shin Watanabe, Chiharu Otani, Yui Miyasaka, Yasuhide Kuwabara, Tomohiro Nishino, Tetsushi Nakao, Masataka Nishiga, Hitoo Nishi, Yasuhiro Nakashima, Fumiko Nakazeki, Satoshi Koyama, Masahiro Kimura, Shuhei Tsuji, Randolph Ruiz Rodriguez, Sijia Xu, Tomohiro Yamasaki, Toshimitsu Watanabe, Masamichi Yamamoto, Motoko Yanagita, Takeshi Kimura, Akira Kakizuka and Koh Ono (2019). Cardioprotective Effects of VCP Modulator KUS121 in Murine and Porcine Models of Myocardial Infarction. JACC: Basic to Translational Science, 4(6), 701-714.

  • 朝日新聞(10月29日 29面)、京都新聞(10月29日 27面)、毎日新聞(11月15日 22面)および読売新聞(11月3日 35面)に掲載されました。