温度に応答して細孔の大きさを変える多孔性配位高分子(PCP)がガスを分離・貯蔵することを解明 -分子ゲートでガスの交通整理-

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北川進 高等研究院物質–細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)拠点長、細野暢彦 同特定助教(現・東京大学講師)らの研究グループは、「ゲート(扉)」の役割を担う分子を多孔性材料の細孔に組み込むことにより、ガス分子の分離や貯蔵、徐放などを可能にする新物質を開発しました。

細孔内に組み込まれた分子ゲートは温度によって開閉を制御でき、細孔内を通過するガス分子の流量の調整や、ガスの種類の選別を可能にします。これにより、ガスを効率的に分離したり、貯蔵したりすることができます。

本研究グループは、本物質を利用し、酸素とアルゴン、エチレンとエタンといったガスの分離に成功しました。また、同様にガスの放出速度を制御することで、貯蔵したガスをゆっくり放出させるという徐放機能も実現させることができました。

本研究成果は、温室効果ガスや空気の分離、メタンの貯蔵と言ったガス分離・貯蔵材料への利用だけでなく、青果の熟成に重要な植物ホルモンの一つであるエチレンガスの徐放材料などといった、ガスの放出コントロールが必要とされる広範な産業への応用が期待されます。

本研究成果は、2019年1月25日に、国際学術誌「Science」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究のイメージ図。蝶型のゲート(扉)分子を多孔性材料に組み込むことで、ガス分子を種類によって選択的に吸着・貯蔵することができる。(イラスト:高宮泉水)

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1126/science.aar6833

Cheng Gu, Nobuhiko Hosono, Jia-Jia Zheng, Yohei Sato, Shinpei Kusaka, Shigeyoshi Sakaki, Susumu Kitagawa (2019). Design and control of gas diffusion process in a nanoporous soft crystal. Science, 363(6425), 387-391.

  • 朝日新聞(2月14日 17面)、京都新聞(1月25日 27面)、産経新聞(1月25日 28面)、日刊工業新聞(1月25日 31面)および読売新聞(2月22日 15面)に掲載されました。