神経巨大遺伝子の発現制御メカニズムの発見 -神経難病および精神疾患の病因解明と治療法開発に期待-

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武内章英 医学研究科准教授、飯田慶 同特定助教、萩原正敏 同教授らの研究グループは、名古屋大学、東京工業大学との共同研究で、RNA結合タンパク質「Sfpq」が、哺乳類の神経細胞で全長が100キロベースを超えるような、巨大な遺伝暗号の読み出しを制御するメカニズムを発見しました。

本研究は、2018年5月2日に米国の国際学術誌「Cell Reports」に掲載されました。

研究者からのコメント

研究の技術革新により、これまで難易度が高かったRNA制御因子群の機能解析を集学的に行うことが可能になりました。本研究は、神経変性疾患・精神疾患の原因遺伝子の機能解析の結果、これまで知られていなかった神経細胞での超長鎖遺伝子固有の発現制御機構の発見と、さらに長い間の謎である基本転写の調節機構、および神経変性疾患や精神疾患の病因・病態の理解を一歩進める研究成果になりました。今後この研究をさらに発展させ、神経の発生の理解と神経疾患の病因の解明や治療法の開発につなげて行きたいと考えています。

概要

細胞内のDNAに書き込まれた遺伝暗号(塩基配列として暗号化された遺伝情報)の読み出しは、非常に下等な動物から哺乳類などの高等動物まで、「転写」という非常に有名なメカニズムで制御されています。遺伝暗号は下等動物ではわずか数キロベースですが、哺乳類の神経細胞では100キロまたは1000 キロベースを超えるものがあります。このように非常に長い巨大遺伝子(超長鎖遺伝子)の遺伝暗号の読み出しがどのように行われているのかは謎のままでした。

本研究グループは、RNA結合タンパク質「Sfpq」が、このような巨大な遺伝暗号の読み出しを制御するメカニズムを発見しました。さらに、このメカニズムの異常が神経細胞死と脳の形成異常を引き起こす事も見出しました。高等生物でどのようにして巨大な遺伝暗号が読み出されるのかという長年の謎に迫るとともに、原因不明の神経難病や精神疾患の病因の解明と治療方法の開発につながる成果です。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1016/j.celrep.2018.03.141

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/230954

Akihide Takeuchi, Kei Iida, Toshiaki Tsubota, Motoyasu Hosokawa, Masatsugu Denawa, J.B. Brown, Kensuke Ninomiya, Mikako Ito, Hiroshi Kimura, Takaya Abe, Hiroshi Kiyonari, Kinji Ohno, Masatoshi Hagiwara (2018). Loss of Sfpq Causes Long-Gene Transcriptopathy in the Brain. Cell Reports, 23(5), 1326-1341.