抗がん薬副作用のしびれ、冷やして予防

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公開日

華井明子 医学研究科博士課程学生、石黒洋 同特定准教授(現・国際医療福祉大学教授)、戸井雅和 同教授、荒井秀典 同教授(現・国立長寿医療研究センター副院長)、坪山直生 同教授らのグループは、手足を冷却することで抗がん薬パクリタキセルの副作用である末梢神経障害(しびれ)を予防できることを確認しました。

本研究結果は、2017年10月12日に医学誌「Journal of the National Cancer Institute」(JNCI)に掲載されました。

研究者からのコメント

左から、坪山教授、華井博士課程学生

がん治療後のしびれは今まで有効な治療や予防方法が無く、しびれが原因でがん治療を断念せざるを得ないケースやがん治療後に生活に支障をきたすケースが後を絶ちませんでした。そのようなしびれをどうにか減らしたいという思いから本研究を開始した結果、冷却が予防に有効であることが分かりました。今後この予防方法が世界中に広まり、より多くのがんサバイバーの方が生活の質を維持しながら安心して治療を受けられるようになることを期待いたします。

概要

乳がんや肺がん等の治療に用いられるパクリタキセルによる手足のしびれは、投与した患者の67~80%が経験するにもかかわらず、今まで効果的な治療薬や予防手段がありませんでした。一度発症すると長期にわたって患者の生活の質(QoL)を低下させることが知られています。

本研究グループは、マイナス25℃~マイナス30℃下で冷やした冷却用グローブとソックスを用いて手足を冷却することで、パクリタキセル投与に伴うしびれが予防可能であることを示しました。更に、しびれの自覚症状や日常生活の不便さだけでなく、触覚や温度の感覚、手先の器用さについても、悪化を予防できることが分かりました。本手法を普及させることで、患者がQoLを維持しながら安心して抗がん剤治療を受けられることが期待されます。

利き手側の手足を冷却し効果を検証

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1093/jnci/djx178

【KURENAIアクセスURL】 http://hdl.handle.net/2433/227520

Akiko Hanai, Hiroshi Ishiguro, Takashi Sozu, Moe Tsuda, Ikuko Yano, Takayuki Nakagawa, Satoshi Imai, Yoko Hamabe, Masakazu Toi, Hidenori Arai and Tadao Tsuboyama (2017). Effects of Cryotherapy on Objective and Subjective Symptoms of Paclitaxel-Induced Neuropathy: Prospective Self-Controlled Trial. Journal of the National Cancer Institute, 110(2), 141-148.

  • 京都新聞(10月18日 23面)に掲載されました。