新規免疫細胞の生存シグナルの解明

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平位秀世 医学研究科助教、前川平 同教授らの研究グループは、マウスを用いて体内で免疫を担うマクロファージや樹状細胞の元である、単球という細胞の生存に重要な役割を果たす遺伝子C/EBPβを特定しました。

本研究成果は、2017年8月16日に米国の科学雑誌「Blood」オンライン版に掲載されました。

研究者からのコメント

本研究の中心となった遺伝子改変マウスは、20年以上前に樹立されたものです。これまでの技術面や学術面での蓄積や進歩に支えられて、新たな発見に結びついたと思うと感慨深いものがあります。今回の研究成果は、最近その存在が明らかになった「非古典的」単球の生理的な機能や、疾患との関連を解明するための基礎となることが期待されます。

概要

白血球の一つである単球は、骨髄でつくられた後に血液中や組織に供給され、組織中のマクロファージや樹状細胞のもとになる免疫担当細胞です。単球・マクロファージは、ウイルス・細菌などの感染に対する生体防御で重要な役割を果たす他、代謝や炎症の制御によって動脈硬化や、癌の進展など様々な病態に関わっています。また、単球が異常に増殖するタイプの白血病も知られています。最近になって、これまで知られている「古典的」単球の他に、今回扱った「非古典的」単球というものがあることがわかってきました。しかし、非古典的単球は発見されてから日が浅く、その特性や、疾患との関わりについては、まだほとんど解明が進んでいません。

本研究グループは、C/EBPβという遺伝子を欠損させると単球が大幅に減少すること、中でも非古典的単球が大幅に減っていることを見出しました。 このことは、C/EBPβが非古典的単球の生存に必須であり、単球の数の維持に重要な働きをしているということを意味します。本研究成果は、単球の数の制御機構を明らかにしたのみならず、非古典的単球の様々な疾患への関与や、病態の理解・治療の開発のために有用であると考えられます。

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1182/blood-2017-03-772962

Akihiro Tamura, Hideyo Hirai, Asumi Yokota, Naoka Kamio, Atsushi Sato, Tsukimi Shoji, Takahiro Kashiwagi, Yusuke Torikoshi, Yasuo Miura, Daniel G. Tenen and Taira Maekawa (2017). C/EBPβ is required for survival of Ly6C- monocytes. Blood, 130, 1809-1818.