心理学の研究成果の再現性は本当に低いのか-心理学者からの考察-

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友永雅己 霊長類研究所教授、三浦麻子 関西学院大学文学部教授、針生悦子 東京大学教育学研究科教授らは、心理学評論刊行会が出版する『心理学評論』誌(編集長:板倉昭二 文学研究科教授)の第59巻第1号として特集号「心理学の再現可能性」を編集し出版しました。

本書は、近年あからさまな研究不正は心理学界においても散見されていることを踏まえ、再現可能性,統計の問題,研究実践 (QRPs) という相互に密接に関連し合うこれらの問題に対する現状の認識と展望について忌憚のない議論を進めるべく企画されたものです。

研究者からのコメント

左から、友永教授、板倉教授、三浦教授

自由な研究活動をがんじがらめに縛ることは誰も望まないと思いますが、我々が自然に正しく振る舞えるよう,制度面での改革もある程度は必要であるかもしれないと考えます。本特集号が,そのような制度改革も含めた積極的なアクションを起こすきっかけとなることを願っています。

概要

2015年にScience誌に過去の心理学の研究について追試を行ったところ、その再現性が40%未満という驚くべき結果が報告され、学界に衝撃をもたらしたのみならず、一般のマスコミにおいても報道され社会的なインパクトを巻き起こしました。

心理学という学問のある意味での「危機的状況」を、実際に心理学研究に従事している研究者、特に日本の研究者はどう考えているのでしょうか。日本の心理学界の現状の把握と将来への展望に向けて、現在精力的にそれぞれの心理学の研究領域で研究されている方々にそれぞれの考えを執筆していただきました。

その結果、研究領域によってこの問題に対する危機感には温度差があること、従来の研究手法には限界があるかもしれないこと、無意識のうちになされている研究行為が再現性を損なっている可能性があることが示され、さらにこのような心理学の信頼を揺るがしかねない状況に対してどう立ち向かっていくべきかについて、さまざまな観点からの論考がなされています。

これら、心理学という研究領域の現在と未来について学界内で巻き起こっている自助的努力を広く一般の皆様にもお伝えし、正しい心理学の知見を今後とも伝えていきたいと考えています。

出版した『心理学評論』誌第59巻第1号「心理学の再現可能性」

詳しい研究内容について