クッシング症候群の原因となる遺伝子変異を発見

ターゲット
公開日

2014年5月23日

小川誠司 医学研究科教授らと、本間之夫 東京大学医学系研究科(医学部附属病院 泌尿器科・男性科)教授らを中心とする共同研究チームは、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)非依存性クッシング症候群の半数以上においてPRKACA遺伝子の変異が生じていることを明らかとし、さらにこの変異によって副腎腫瘍が持続的にコルチゾールを産生するメカニズムを解明しました。

本研究内容は、2014年5月23日(米国東部時間)に、米国科学雑誌「Science」電子版にて公開されました。

研究者からのコメント

本研究の成果をふまえ、今後の研究によりACTH非依存性クッシング症候群の新たな診断方法や治療法の開発が進んでいくことが期待されます。

ポイント

  • ACTH非依存性クッシング症候群の原因となる遺伝子変異を発見し、副腎腫瘍からコルチゾールが持続的に産生されるメカニズムを解明した。
  • ACTH非依存性クッシング症候群の原因はこれまで知られていなかったが、PRKACA遺伝子が高率に変異していることを見出し、その結果生じる機能的な異常も明らかとした。
  • 本研究の成果が、ACTH非依存性クッシング症候群の診断や治療に活用されることが期待される。

概要

クッシング症候群は、副腎から持続的かつ過剰にコルチゾールが分泌されることにより、糖尿病や高血圧など多彩な症状を引き起こす疾患です。このうち副腎腫瘍が、脳下垂体からの制御に従わず勝手にコルチゾールを産生するタイプを、ACTH非依存性クッシング症候群と呼びますが、これまでその原因は分かっていませんでした。

今回、本研究チームは、ACTH非依存性クッシング症候群をきたした副腎腫瘍を対象として遺伝子変異解析を行い、半数以上の症例に生じている遺伝子変異を同定しました。さらに、変異した遺伝子の機能の変化を明らかとすることにより、コルチゾールが持続的に産生されるメカニズムを解明しました。

図:コルチゾールの合成経路と、PRKACA/GNAS変異

詳しい研究内容について

クッシング症候群の原因となる遺伝子変異を発見

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1126/science.1252328

Yusuke Sato, Shigekatsu Maekawa, Ryohei Ishii, Masashi Sanada, Teppei Morikawa, Yuichi Shiraishi, Kenichi Yoshida, Yasunobu Nagata, Aiko Sato-Otsubo, Tetsuichi Yoshizato, Hiromichi Suzuki, Yusuke Shiozawa, Keisuke Kataoka, Ayana Kon, Kosuke Aoki, Kenichi Chiba, Hiroko Tanaka, Haruki Kume, Satoru Miyano, Masashi Fukayama, Osamu Nureki, Yukio Homma, Seishi Ogawa
"Recurrent somatic mutations underlie corticotropin-independent Cushing’s syndrome"
Science vol. 344 no. 6186 pp. 917-920, 23 May 2014

掲載情報

  • 毎日新聞(6月12日 13面)および科学新聞(5月30日 4面)に掲載されました。