デジタル絵本に独自の教育効果を発見 -4歳児、ひらがなの読みを促進-

ターゲット
公開日

2014年5月2日

正高信男 霊長類研究所教授らの研究グループは、デジタル絵本による、独自の教育効果の可能性が示唆されることを発見しました。

4歳児15名に「たなばたバス」という絵本のデジタル版を、6日間にわたり、毎日2回、計12回の「よみきかせ」を経験させたところ、読めるひらがなの文字数が平均して3文字増加した一方で、従来の紙媒体の絵本で「よみきかせ」を行った別の15名では、そうした学習は起こりませんでした。

本研究成果は、欧州科学誌「Frontiers in Psychology」誌にオンライン掲載されることになりました。

研究者からのコメント

正高教授

この研究から、デジタル絵本のほうが従来の印刷された絵本よりすぐれていると主張するつもりはありません。

養育者がこどもに絵本をよみかせ、楽しいひとときを過ごすのがこどもの発達に重要な役割をはたすのは、ほとんど自明の事実です。しかし、いつも子どもに絵本を読んでやれる時間をとれるかどうかはわかりません。そんなときに、デジタル絵本を効果的に活用することで、こどもの読みの能力を伸ばすことができる、そういう柔軟な対応の可能性を示唆した研究結果とうけとっていただけることを期待しています。

概要

デジタル書籍の子どもへの影響については、欧米では議論が沸騰しています。アメリカでの3,500人を対象とした大規模調査では、こどもの電子書籍愛好者は2012年から2013年までの一年間に16%から23%に増加しました。専門家や研究者には、この変化について否定的な意見が大勢をしめる気配ですが、一方で、実証的な研究は皆無でした。また、いったん動き出した時代の流れを止めることも困難であると考えられます。

本研究では、アイパッドにダウンロードされた「たなばたバス」を母子で6日間、連続して体験したところ、こどもが読むことができるひらがなの文字数は体験以前にくらべて、平均して3文字増加しました。印刷された絵本の「よみきかせ」を経験した子どもではこういう効果は見られませんでした。ただし、用いられたデジタル絵本はただ単に、印刷物をデジタル化したものではなく、ストーリーがプロのナレーターによって、ナレーションとして流れ(ナレーション機能)、かつ読み上げられる文字がその都度、画面上で赤く彩りされる(ハイライト機能)ようにプログラムされたものであることで、印刷された絵本にはない特徴をそなえています。

詳しい研究内容について

デジタル絵本に独自の教育効果を発見 -4歳児、ひらがなの読みを促進-

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.3389/fpsyg.2014.00396

[KURENAIアクセスURL] http://hdl.handle.net/2433/186981

Nobuo Masataka
"Development of reading ability is facilitated by intensive exposure to a digital children's picture book"
Frontiers in Psychology 5: 396 Published online: 02 May 2014

掲載情報

  • 京都新聞(5月24日 9面)、産経新聞(5月3日 22面)、日本経済新聞(5月3日 38面)、毎日新聞(5月3日 27面)および科学新聞(5月23日 2面)に掲載されました。