2025年11月17日に、「価値多層社会のヒューマニティーズ -価値の変容、自己の変容、社会の変容-」と題し、芝蘭会館 山内ホールにて、京都大学・京都哲学研究所 包括協定記念セミナーを開催しました。
本セミナーは、同年9月に開催した「第1回京都会議 -価値多層社会の実現に向けて-」(主催:京都哲学研究所、共催:京都大学)が、真の幸福やめざすべき価値が問われている現在において、その課題意識の重要性・喫緊性から大きな反響を呼んだことを受け、京都哲学研究所と包括協定を締結している本学が、その連携の第一歩として開催したものです。
開会にあたり、木村俊作 成長戦略本部副本部長が挨拶に立ち、「価値をどのように認め、社会で共有していくかが、持続可能社会の核心である」と述べました。
引き続き3講演が行われ、京都哲学研究所の共同代表理事も務める出口康夫 文学研究科教授が、同研究所が掲げる理念「価値多層社会」について、また、第1回京都会議の成果や、今後計画している「京都宣言」策定についても紹介し、京都から世界へ哲学的提言を発信していく構想を共有しました。続いて基調講演として、認知科学・心の哲学の第一人者であり、京都会議にも登壇された、L.A.ポール イェール大学教授が、「変容的経験(Transformative Experience)」をテーマに、哲学・認知科学・意思決定理論を横断したダイナミックな議論を展開しました。最後に稲谷龍彦 法学研究科教授が、AIが人間社会や法制度に与える影響について講演しました。不確実な環境では、完璧な制度を事前に設計するのではなく、走りながら修正していく「アジャイルガバナンス」が重要であることが述べられました。
講演後の質疑応答では、ポール教授、出口教授、稲谷教授の間で、哲学・脳科学・AI・法学など多様な領域を横断し、「価値」や「自己」の変容をめぐる最前線の議論が交わされました。
閉会にあたって、熊谷誠慈 人と社会の未来研究院副研究院長が、現代社会における価値観の多様性、生成AIによる急速な環境変化を踏まえ、人文学・社会科学が果たすべき役割の重要性を強調し、また、異なる分野・価値が交差することで新たな視点やイノベーションが生まれるとの期待が示されました。
セミナー終了後は、第2部として「研究懇談会」を開催しました。視覚科学・認知科学・景観学・脳科学・ビジネス倫理学といったさまざまな角度から問題提起が行われ、今後の京都会議、京都宣言に向けたテーマの可能性を探りました。
本学と京都哲学研究所では、今後も学際的議論を進め、社会へ向けた思想的・倫理的提言を共同で進めていく予定です。