次世代低炭素ナノデバイス創製ハブ拠点開所式 挨拶(2011年5月26日)

第25代総長 松本 紘

松本総長 木々の緑も眩しい季節となりました。本日の「低炭素ナノデバイス創製ハブ拠点」の開所式にあたり、多くの皆様方にご臨席賜りましたこと大変嬉しく思います。東日本大震災の対応などで大変お忙しい中ご出席いただきました、文部科学省 研究振興局基盤研究課長 柿田恭良様をはじめとして、ご来賓の皆様、学内外のご関係の皆様に京都大学を代表して心よりのお礼を申し上げます。

 本ハブ拠点は、平成21年度の文部科学省の補正予算により、「成長戦略への布石」であるとして「環境・エネルギー技術への挑戦」の一環として構想された「低炭素社会構築に向けた研究基盤ネットワークの整備」事業において、材料創製を担う物質・材料研究機構の「低炭素化材料設計・創製ハブ拠点」、ならびに評価・計測を担う東京大学の「環境材料・先端ナノ計測ハブ拠点」とともに、微細加工・試作を担う拠点として整備されたものです。

 本ハブ拠点の整備の過程においては、建物の建設をはじめとし、設置すべき装置の短期間での調達などに関して、本学の教員をはじめとして、施設部、産官学連携本部、工学研究科の職員の皆様には、今日の開所にいたるまで、種々ご尽力いただきました。ここに皆様のご苦労を大いにねぎらいたいと思います。

 さて、低炭素社会を実現するためには、エネルギーを「創る」「蓄える」「使う」「戻す」という4つの領域での画期的な技術革新が求められます。 3月11日の震災以来、エネルギー問題は創るのみならず、使う、さらに戻すということが大変重要で、その中で、大学の果たすべき役割の重要性はますます大きくなっています。

 本拠点は、次世代のナノテクノロジー、ナノ材料・ナノマイクロデバイス・ナノマイクロシステムの研究開発において 必須の多種多様な基板・薄膜材料をウェハレベルで加工・評価することができるナノマイクロファブリケーション試作ラインを整備しました。 そして、この拠点は全国のナノテクノロジー材料およびデバイスの研究者に広く開かれたシステムとして運用されます。 加えて本拠点は、国内の研究者の高度な基礎研究と応用研究を支援するため、平成22年度に設置した学際融合教育研究推進センターに所属する、 新たな人事制度によって雇用された、高度専門技術職員(中間職)により運営されるという特色を持っています。また、 拠点を利用する研究者が相互に研究内容・技術について活発に交流することができ、 さらなる研究課題の設定や新たな基礎・応用研究を創出できるようアンダーワンルーフ型の研究交流環境も提供します。

 本拠点が日本のナノテクノロジー研究者の研究を飛躍的に加速させ、日本の学術研究・産業の優位性を確保するとともに 、人材以外に資源の乏しい日本が節約の心で磨き上げてきた省資源をもたらすナノテクノロジーの更なる技術革新によって、 人類の生存を脅かす資源をめぐる紛争を軽減し、人類のサバイバビリティーに寄与できることを期待しています。

 本日、大いなる期待を胸に参加された方も多いと思います。是非、基礎研究から応用研究の推進、さらには効果的な技術移転により産学連携を一層加速化するために、個々の研究室では購い難い、本ハブの先進装置群を大いに活用いただきたいと思います。

 この施設が、日本の低炭素化に大いに貢献するとともに、ナノテクノロジーの研究開発から技術移転まで、一層の飛躍を図る拠点となることを祈念して、私の挨拶とさせていただきます。

関連リンク

「次世代低炭素ナノデバイス創製ハブ拠点」開所式を開催しました。(2011年5月26日)