平成22年 新年ご挨拶 (2010年1月4日)

第25代総長 松本 紘

松本総長 新年あけましておめでとうございます。

 平成22年の干支は庚寅(こういん)つまり「かのえ、とら」であります。十干の七番目に当たる庚(かのえ)は前年を受け継ぎ、繰り返し継続、更新するとの意味があるそうです。本学も昨年に達成できなかったことを粘り強く継続しつつ、積極的に新しいことにチャレンジしていきたいと思います。
  十二支の寅に関していえば、寅吉や寅次郎や寅彦などの勇ましい名前も最近は減り、世相を写しているのかなという年賀状をいただきました。元来、「寅」という字は、相対して手をさしのべあう形を表しているそうで、互いに協力して相手にも敬意を表しつつ仕事を進めるという意味があるそうです。京都大学の伝統として対話を根幹とする自樹自立がこれまで受け継がれてきましたが、寅年にこそ大学一丸となって、大学の本領や大学の意義を構成員すべてがよく考え、社会における大学の果たすべき役割を着実に果たしていきたいと思います。

 さて、大学を取り巻く環境の変化は激しく、それへの対応や10年後を見据えた大学の改革など多くの課題を京都大学は抱えています。新たな年を迎え、私の総長としての任期の6年、すなわち72ヶ月のうち、5分の1が既に経過しました。日本や世界ひいては人類の行く末はますます不透明感を増しているように見えますし、世界や日本の指導者も替わりました。しかし、未来は待つものではなく、創りだしていくものであるとの信念のもと、京都大学のあるべき姿にむかって着実に必要な改革を進めていきたいと思います。

 本学の教員が授かる国際的な学術賞等が示すように、いくつかの研究分野において京都大学は国際的にそのプレゼンスを現しています。私は、京都大学をさらに魅力ある大学とするために、研究専念の障害となっているシステム的な問題として何があるのかを明らかにし、それを取り除くように大学全体で考え、改善を進めていきます。教育改革は難問です。それぞれの部局のたてた入試に対する基本方針、学修課程に関する基本方針、学位授与に関する基本方針に沿って優れた人材を育成するために、教育の全課程をいままで以上に可視化するとともに、全学の学生が受講する教養教育について、それが全学に広く関係する問題であるからこそ、ここで一緒に考えてみようと思います。あわせて、社会に開かれた形で国際寮、研究者寮、混住寮、将来の学生寮のあり方も考えて、具体的に進めうるものは実施にむけて直ちに行動を起こしたいと考えています。

 昨年の年初の挨拶において、我が国および人類の将来にとって、大学は知の淵源であり、衍沃な大地の如く、そのあるべき姿を保ちうる限り、永遠に枯れることなく人材と知恵を生み出しうる土壌のようなものであるとの「大学土壌論」を示したところですが、その土壌を一層豊かなものとするための改革を本年も一層着実に進めていく所存です。