卒業生の皆さんへ (2009年3月23日)

第25代総長 松本 紘

 卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。卒業生のご両親ならびにご親族の方々には、今日のよき日を迎えられましたことにお祝い申し上げます。

 さて、私は常々みなさんが京都大学で垣間見ることができた学問の本質は、「真実をめぐる人間関係」であると思っています。どのような研究対象でも最終的には人間にたどり着きます。そして、学問は人の営為です。大学生活では心をふるわすいくつかの出会いを経験されたことでしょう。同世代の友との出会いや教員との出会いの中で、これまでの自分にはなかった個性的な考え方や感じ方を多く学んできたことと思います。これからの人生においても数え切れないほどの人々とかかわり、そして自分を磨いていってください。人と豊かに綾なし、自らを生き生きと彩る。そのためには、何事にもとらわれることなく、寛容で、そして京都大学の学風といわれる自由な心が大切です。

 大学は、多彩で深遠な教養に触れ、専攻分野の専門的な教育を受け、未来を切り拓いていく人生の基軸を築くところです。大学での学びの経験を土台に、これからみなさんそれぞれが様々な経験を重ね、社会のために知識や知恵を生み出し、活躍してほしいと思います。

 大学を卒業されたといっても、学びは終わったわけではありません。むしろ本当の学びはこれからかもしれません。しかし、十分な基軸はこれまでに培われたと思います。京都大学は社会に開かれた大学を目指し、人生の基軸基地としての役割を構築してゆきます。卒業後もたびたび大学を訪れ、自らの可能性を広げるために京都大学を人生の基軸地として積極的に活用し、みなさんが大学と綾なす輝かしい未来を実現されますことを総長として期待しています。