京都大学環境報告書2008発行記念シンポジウム 挨拶 (2009年1月30日)

第25代総長 松本 紘

松本総長  京都大学では、2008年度の環境報告書を発行いたしました。本日は、その発行を記念し、"「京都大学方式」の現状と今後の展望"をお示しするシンポジウムです。たくさんの方々にご出席いただき、また、多くの方々のお世話で開かれることになり、本当にありがとうございます。
  世界の環境への取組は、1984年に「環境と開発に関する世界委員会」(WCED=World Commission on Environment and Development)が国連に設置されたことが始まりともいえます。その時の委員長が後にノルウェーの首相となったブルントラント女史であったことから、その名前をとってブルントラント委員会と呼ばれています。  
  この委員会は委員個人の自由な立場で討議を行ういわゆる「賢人会議」として、21人の世界的な有識者により構成されました。
  火器をもって物事を解決しようとするのではなく、「世界の知恵を集めて世界のことを考える。」これは素晴らしいことだと思います。

  嬉しいことに設置の経緯に日本が絡んでいます。1982年に開催された国連環境計画(UNEP)管理理事会特別会合(ナイロビ会議)において、日本政府が特別委員会(21世紀における地球環境の理想の模索と、その実現に向けた戦略策定を任務とする)の設置を提案し、これを受けて、国連総会で承認されたからです。
  会合が重ねられまとめられた報告書"Our Common Future"(邦題『地球の未来を守るために』)では、環境保全と開発の関係について「将来世代のニーズを損なうことなく現在の世代のニーズを満たすこと」という「持続可能な開発」の概念が打ち出されました。この概念は、その後の地球環境保全のための取組の重要な道標になっています。
  また、1997年に京都で開催された「気候変動枠組条約第3回締結国会議(COP3)」で採択され、2005年2月に京都議定書が発効されました。この中で、日本には2012年までに1990年比6%の温室効果ガスを削減するという義務が課せられています。京都府においては、京都議定書の発効を踏まえ、府民総参加による地球温暖化対策を一層推進していくため、2005年12月に「京都府地球温暖化対策条例」を制定し、2006年4月に施行しました。条例では、温室効果ガスの排出量が大幅に削減された脱温暖化社会の実現をめざし、その第一歩として、2010年度までに府内における温室効果ガスの総排出量を1990年度比で10%削減という高い目標が掲げられています。京都大学も、京都の地に根をはる大学として、その一端を担わなければなりません。

 会場の様子京都大学では特別な取り組みとして、環境計画を策定し環境賦課金制度を今年度からスタートさせました。環境計画および環境賦課金方針に基づき、各部局から提出された平成20年度事業計画案が審査され、この審査結果を基に、実施する事業の決定を行い、現在3月末の完了に向けて順次契約・執行を進めています。平成21年4月以降には環境賦課金制度により実施した事業の効果が実際に数値となって現れてきます。

  最後になりましたが、今回の環境報告書作成にあたりましては、学生の皆さんやステークホルダー委員会の皆さん、その他様々な方にお世話になりました。
  本日のシンポジウムでは2つパネルディスカッションを用意しています。
  1つ目は「循環社会におけるキャンパスのあり方 ~レジ袋削減プロジェクトを出発点として~」と、2つ目は「省エネルギー・低炭素化キャンパスへの展開 ~環境賦課金を出発点として~」をテーマに、多彩なパネラーを迎え行われます。私も楽しみに聞かせていただきますので、皆様も是非今後の環境配慮活動の参考としてください。

 これをもって、私からの挨拶とさせていただきます。