竹市雅俊教授が日本国際賞受賞

竹市雅俊教授は、昭和41年名古屋大学理学部生物学科卒業、同45年京都大学理学部助手となり、同61年同教授に就任後、平成7年大学院理学研究科に配置換、そして同11年同大学大学院生命科学研究科の創設に際し細胞認識学分野の教授に就任しました。その後、平成14年からは生命科学研究科分子病態学分野(連携講座)に就任され現在に至っています。この間、平成5年から7年間、京都大学理学部附属分子発生生物学研究センター長を併任、同12年より理化学研究所発生・再生科学総合研究センター・センター長を兼務し、そして同14年より研究の拠点を同センター内に置いています。

竹市教授は、長年にわたり動物細胞間の接着・認識機構の研究を行い、この分野において国際的に常に先導的な役割を果たしています。竹市教授は、細胞どうしの接着のために2種類の機構(カルシウム依存性機構とカルシウム非依存性機構)が存在することを見出したのみならず、カルシウム依存性細胞接着の実体であるカドヘリン接着分子ファミリーを発見しました。そしてカドヘリンは細胞間接着のために必須であると同時に、選択的な細胞認識の担い手でもあり、多細胞体制の形成・維持に極めて重要な役割を果たすことを明らかにしました。カドヘリンの機能は種々の細胞質因子によって制御されており、カドヘリンの発現レベルや機能制御の異常がガン細胞の転移に関与することから、発生生物学のみならず医学分野からも多くの注目を集めています。また、最近ではカドヘリンが神経細胞シナプスに存在することを証明し、神経回路形成の分子機構の解明に向かって研究を展開しています。これらの業績に対し、平成13年国際発生生物学会ロス・ハリソン賞を含む数々の国内外の賞を授与され、同10年には日本学士院会員に選出されました。

竹市先生のご興味は御自身の細胞生物学の分野に留まらず、昆虫学から神経生理学の分野まで多岐にわたっています。実験室内のそして自然界での様々な生命現象に対して、「不思議だ!」とか「面白い!」と素直に感動される少年のような純粋な心は、科学者の本質であると同時に先生の英知の源の1つです。本学としましても益々のご研究のご発展を祈願しておりお祈り申し上げます。