学術研究の推進に向けた取り組み

学術研究の推進に向けた取り組み

平成20年8月13日掲載

平成20年8月1日

京都大学 研究推進部 研究推進課

 国からの予算措置としての運営費交付金は、年々削減されており、本学においても厳しい財政運営が求められているところであり、教育研究基盤の維持・強化を目的とした競争的資金獲得の方策は、自己収入の拡充に向けた取り組みとして一層強化する必要がある。

 研究費の財源が、競争的資金へシフトするに伴い、各省庁やFA(Funding Agency)が公募する競争的資金のプログラムは、近年大型化しておりプロジェクト期間も長期化している傾向にある。また、これらのプログラムは、申請する機関の組織改革・システム改革を求めたり、拠点形成を支援するものが増え、総長のリーダーシップのもと、機関による申請が求められている。

 これらの大型プログラムの課題採択や配分額の決定には、外国人を含む専門分野の研究者で構成される委員会、審査会等による書面審査及びヒアリング審査という二段階審査で行われている。

 このような状況を踏まえ、本学では、競争的資金の獲得に向け大学として組織的に対応するため、研究担当理事のもと、以下のような支援体制を構築している。

研究戦略タスクフォース

 平成17年11月、本学における研究戦略の方針について企画し、その全学的推進に関し研究担当理事を補佐するため、「研究戦略タスクフォース」を設置している。

 プログラムディレクターには、理学研究科 吉川研一教授、医学研究科 塩田浩平研究科長、薬学研究科 藤井信孝研究科長、工学研究科 小寺秀俊教授、地域研究統合情報センター 田中耕司センター長に就任(平成20年8月)いただいており、本学の研究戦略の方針等について議論している。

研究戦略室

 研究戦略タスクフォースのもとに「研究戦略室」を設置し、プログラムオフィサーが研究推進部研究推進課と連携しながら、研究資金を獲得するための様々なプログラムへの申請を支援している。

 プログラムオフィサーには、医学部附属病院 清水章教授、工学研究科 杉野目道紀教授、農学研究科 入江一浩教授、人間・環境学研究科 浅野耕太教授、エネルギー理工学研究所 大垣英明教授に就任(平成19年8月)いただき、科学研究費補助金、科学技術振興調整費、グローバルCOEプログラム等への申請を支援している。

 「世界トップレベル国際研究拠点形成促進プログラム」においても、情報収集や申請書作成・ヒアリング審査等への助言を行い、「iCeMS(物質-細胞統合システム拠点)」が採択されている。

 今後は、人文・社会科学分野の支援体制を強化していきたいと考えている。

研究企画支援室

 平成19年1月、研究担当理事のもと「研究企画支援室」を設置(室長:吉川潔 前エネルギー理工学研究所長)し、学術研究活動の調査・分析を取り入れることにより、外部資金獲得に向けた全学的支援体制を強化した。

 研究企画支援室では、学術研究活動の状況等の調査・分析、科学技術関係予算等の外部資金に関する情報収集とその分析、研究推進に関する様々な支援策の策定、他大学との連携推進などの活動を行っている。

 上記支援体制において支援したプログラム等は、以下のとおりである。

科学研究費補助金

 本学の平成19年度の受入状況は、3,050件、約140億円(平成18年度は、2,966件、約133億円)であり、近年5ヵ年においては、増加の傾向にある。(間接経費を含む)

 若手研究(S)や基盤研究(S)などのヒアリング審査が行われる種目については、研究戦略室及び研究企画支援室による学内模擬ヒアリングを実施し、ヒアリング審査への対応についてアドバイスを行っている。

科学技術振興調整費

 本学の平成20年度の新規採択課題は、以下のとおりであり、研究戦略室及び研究企画支援室による情報収集・提供、申請へのアドバイス、学内模擬ヒアリング等を実施している。

若手研究者養成システム改革

  • わが国の将来を担う国際共同人材育成機構 [医学研究科]
  • 先端技術グローバルリーダー養成プログラム [工学研究科]

アジア・アフリカ科学技術協力の戦略的推進

  • 環境マネジメント人材育成国際拠点 [地球環境学堂]
  • デング熱の発症と病態に関連する遺伝因子の同定 [医学研究科]

重要政策課題への機動的対応の推進

  • 新iPS細胞およびiPS細胞活用の調査研究 [再生医科学研究所]

グローバルCOEプログラム

 平成20年度は、本学から以下の6拠点が採択されている。同プログラムの公募は例年12月であるが、研究戦略タスクフォース、研究戦略室及び研究企画支援室により、8月から、申請の意向調査、申請予定拠点との打合せ、情報収集・提供、本学として申請する拠点の調整、申請にあたってのアドバイス、学内模擬ヒアリング等を実施している。現在では、平成21年度の申請に向けての取り組みが既に始まっている。

医学系

  • 生命原理の解明を基とする医学研究教育拠点 [医学研究科 医学専攻]

数学・物理学・地球科学

  • 数学のトップリーダーの育成 [理学研究科 数学・数理解析専攻]
  • 普遍性と創発性から紡ぐ次世代物理学 [理学研究科 物理学・宇宙物理学専攻]

機械・土木・建築・その他工学

  • アジア・メガシティの人間安全保障工学拠点 [工学研究科 都市環境工学専攻]

社会科学

  • 親密圏と公共圏の再編成をめざすアジア拠点 [文学研究科 行動文化学専攻]

学際・複合・新領域

  • 地球温暖化時代のエネルギー科学拠点 [エネルギー科学研究科 エネルギー基礎科学専攻]

世界トップレベル国際研究拠点形成促進プログラム

 本プログラムは、高いレベルの研究者を中核とする世界トップレベル研究拠点の形成を目指す構想に対し、国が集中的な支援を行い、システム改革の導入等、自主的な取組を促すことにより、研究水準の一層の向上を図るとともに、世界第一線の研究者が自主的に参入を希望してくるような、優れた研究環境と極めて高い研究水準を誇る「目に見える拠点」を形成することが目的で、平成19年5月に公募が実施された。

 本学からは、「iCeMS(物質―細胞統合システム拠点)」(拠点長:中辻憲夫)が採択されており、今後、10年間において取り組むこととなっている。

 この申請に当たっても、研究戦略タスクフォース、研究戦略室及び研究企画支援室により、申請の意向調査、申請予定拠点との打合せ、情報収集・提供、申請に当たってのアドバイス、学内模擬ヒアリング等を実施した。また、同プログラムは、大学の組織・システム改革等を求められるため、関係事務部局との連絡調整を行うとともに、拠点事務組織の構築に対する支援等を行った。

 以上の競争的資金の獲得以外にも、以下のような様々な研究支援を実施している。

iPS細胞研究推進体制の整備

 国等からも様々な支援策が示されているが、本学においても、iPS細胞研究推進体制を整備しているところである。平成20年1月22日には、WPI(世界トップレベル研究拠点)の一つであるiCeMS(物質―細胞統合システム拠点)の一部を発展させた形で、iPS細胞研究センター(CiRA)を設置している。

 このセンターを中心として、iPS細胞の作製技術の開発から臨床応用までを念頭に置いた統合的な研究体制を作り、国内外に開かれた拠点を形成するため現在組織の整備が進められている。

「先端医療開発特区」(スーパー特区)

 経済財政諮問会議(平成20年度第13回、5月23日開催)において提出された「「先端医療開発特区」(スーパー特区)の創設について」に対応すべく、情報収集を行っているところであり、重点分野として取り組むものについての調整を行う必要がある。

若手研究者支援

 若手研究者の研究活動を支援するため、学内経費により以下の研究費を措置している。これらの研究費は、公募を行い研究戦略室における審査のうえ採否を決定している。

京都大学若手研究者スタートアップ研究費

 平成17年度より取り組んでいるもので、その趣旨は、本学に採用されたばかりの若手研究者、競争的資金の制度上(申請時期等)の問題から研究費の獲得ができなかった研究者などを対象として、今後の競争的資金の獲得に結びつく研究として取り組めるよう、研究のスタートアップを研究費の面から支援するというものである。

京都大学若手研究者ステップアップ研究費

 平成20年度より取り組んでいるもので、その趣旨は、研究キャリアを積んだ若手研究者の意欲的な活動を支援するため、比較的大型の研究費(科学研究費補助金 若手研究A又は若手研究S/基盤研究S/基盤研究Aを対象)の獲得へつながるよう、研究のステップアップを研究費の面から支援するというものである。

 また、平成19年4月及び平成20年3月には、「若手研究者支援制度に関する説明会」を、吉田キャンパス及び桂キャンパスで開催している。同説明会は、日本学術振興会から講師を招き、日本学術振興会が実施する若手研究者支援制度(特別研究員制度及び若手研究者を対象とする科学研究費補助金)について説明を行うとともに、日本学術振興会の学術システム研究センターにおいて主任研究員を勤めている本学の教員から申請に当たってのアドバイスを行っている。

女性研究者支援

 本学における女性研究者の活躍を促進するため、平成18年度に採択された科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成事業」及び学内経費により、平成18年9月に「女性研究者支援センター」を設置し、支援を行っている。

 女性研究者支援センターでは、1広報事業として、シンポジウム・セミナー企画、広報誌の発刊、2相談事業として、京都市からのカウンセラー派遣による女性の悩み相談窓口、学内メンター制度、3育児介護支援事業として、保育園待機乳児のための保育室設置やキッズサイエンススクールの開催、4病児保育事業として、病児保育室の設置・運営、5就労形態検討事業として、出産・育児・介護等により研究時間の確保が困難な研究者への研究・実験補助者による支援、6地域連携事業として、京都府、京都市との連携による、高等学校への出前事業、女子高生車座フォーラム等を実施している。

 科学技術振興調整費による支援期間(平成20年度末)終了後も、関連する各組織の協力を得つつ、全学的、継続的に取り組むことが必要と考えている。

シニア・コア研究者フォローアップ研究費

 平成20年度より取り組んでいるもので、その趣旨は、一時的に外部資金による研究活動経費の獲得ができなかった研究者を対象に、これまでの優れた研究の継続が困難な場合において、過去の実績等を考慮のうえ研究活動の継続をフォローしようとするものである。平成20年度は、パイロットプランとして取り組み、研究者の意見を聴取したうえで次年度以降に見直しを行うこととしている。

公的研究費の管理・監査のガイドラインに基づく体制整備

 平成19年2月に、文部科学省から「研究機関における公的研究費の管理・監査のガイドライン(実施基準)」が示され、本学では、「国立大学法人京都大学における競争的資金等の適正管理に関する規程」を平成19年10月29日付けで定めるとともに、「不正防止計画推進室」を設置し、様々な研究費の不正使用の防止策を展開していくこととしている。

 平成20年4月には、研究推進課に、不正防止計画案の作成、競争的資金等の運営管理の実態把握、研究室等の現場の処理の実態把握等の実務を行う部署「研究経理企画調査室」を設置し、実効性のある体制を整備している。

他大学等との連携協力協定

 本学は、様々な大学・機関と連携協力協定を締結しているが、慶應義塾大学及び立命館大学との協定締結に当たっては、研究企画支援室を中心に事前交渉、連絡調整、連携内容策定などを行い、広報室と共同で報道機関対応等を行った。なお、現在は「産業技術総合研究所」との連携協定に向けて対応しているところである。

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