X線自由電子レーザー(XFEL)による重原子の特徴的な振舞いを検出-XFELイメージングに不可欠な原子データを提供-

X線自由電子レーザー(XFEL)による重原子の特徴的な振舞いを検出-XFELイメージングに不可欠な原子データを提供-

前のページに戻る

用語解説

X線自由電子レーザー(XFEL:X-ray Free-Electron Laser)

X線領域で発振する自由電子レーザー (Free-Electron Laser) であり、 可干渉性、短いパルス幅、高いピーク輝度を持つ。自由電子レーザーは、 物質中で発光する通常のレーザーと異なり、物質からはぎ取られた自由な電子を加速器の中で光速近くに加速し、 周期的な磁場の中で運動させることにより、レーザー発振を行う。

オージェ電子

励起状態にある原子がより安定な状態に遷移するとき、準位間のエネルギー差に等しいエネルギーを原子内の他の電子に与えて非放射的に遷移し、その際に1個の電子を放出する現象をオージェ効果と呼び、その時に放出される電子はオージェ電子と呼ばれる。オージェ電子放出が起きるごとに、原子イオンの電荷数は増大する。オージェ電子放出は原子番号の小さい原子や、比較的外側の殻に空孔ができた場合に多く起こり、原子番号の大きい原子の内殻に空孔ができたときはX線を放射する確率が高くなる。また、内殻の空孔がオージェ電子放出を起こした場合、多段階のオージェ効果による遷移を起こし、多価イオンを生成する。

SACLA

理化学研究所と高輝度光科学研究センターが共同で建設した日本で初めてのXFEL施設。科学技術基本計画における五つの国家基幹技術の一つとして位置付けられ、2006年度から5年間の計画で整備を進めた。2011年3月に施設が完成し、SPring-8 Angstrom Compact free electron LAserの頭文字を取ってSACLAと命名された。2011年6月に最初のX線レーザーを発振、2012年3月から共用運転が開始され、利用実験が始まっている。諸外国と比べて数分の一というコンパクトな施設の規模にも関わらず、0.1nm以下という世界最短波長のレーザーの生成能力を有する。

LCLS

米国スタンフォード線形加速器センター(現在のSLAC国立加速器研究所)で建設された世界で初めてのXFEL施設。Linac Coherent Light Sourceの頭文字をとってLCLSと呼ばれている。2009年12月から利用運転が開始された。

飛行時間型イオン質量分析装置

加速させたイオンの飛行時間を計測することによりイオンの質量と電荷の比を測定する装置。イオンは、既知の強度の電場によって加速されることで、電荷に比例した運動エネルギーを得る。加速されたイオンが一定距離を飛行する時間を測定することで、質量と電荷の比を測定することができる。本研究のように質量が既知である場合には電荷が決定できる。

フルエンス

光の強度を表す量の一つ。ある球体に入射する粒子(本研究では光子)の数を、その球体の大円の面積で割ったものとして定義される。