異常原子価鉄イオンが示す機能特性原理の解明 -スイッチ、センサーなどに使える多機能新材料開発へ向けた新知見-

異常原子価鉄イオンが示す機能特性原理の解明 -スイッチ、センサーなどに使える多機能新材料開発へ向けた新知見-

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用語解説

異常原子価鉄イオン

酸化物の中では、鉄イオンは通常は2価(Fe2+)や3価(Fe3+)のイオン状態となるが、これとは異なる、高い酸化状態の鉄イオン。

Aサイト秩序型ペロブスカイト構造

ペロブスカイト構造(ABO3)におけるAサイトが1:3の割合で2種類のイオンで秩序化して占められるという特徴的な結晶構造をとる物質(図1)。

巨大磁気抵抗効果

磁気抵抗効果は磁場をかけると物質の電気抵抗が変化する現象であり、磁気記録の読み取りヘッドなどに使われている特性である。巨大磁気抵抗効果は磁場中での電気抵抗変化が極めて大きいものである。本研究グループでは、Aサイト秩序型ペロブスカイト構造酸化物BiCu3Mn4O12における巨大磁気抵抗効果を既に見いだしている。

巨大誘電率

通常、酸化物の誘電率は室温で数十から数百程度である。まれに数万以上の大きな誘電率を示す物質があるが、Aサイト秩序型ペロブスカイト構造酸化物CaCu3Ti4O12などはその例として、活発に研究が進められている。

常磁性金属

磁石に付かず、電荷が流れる物質の特性。

フェリ磁性絶縁体、反強磁性絶縁体

絶縁体は電荷が流れない物質の特性である。フェリ磁性では、物質の中で磁性原子の磁気モーメントが互いに反対方向を向いているが、完全には打ち消し合わないため、磁石につく性質を示す。一方、反強磁性では、反対方向に向いた磁気モーメントが完全に打ち消し合うことにより、磁石に付かない性質を示す。

負の熱膨張

ほとんどの物質では、温度を上げていくと体積が膨張する正の熱膨張を示す。ところが、まれに、温度を上げると体積が可逆的に減少する物質があり、「負の熱膨張」と呼ばれる。これは、温度変化に対しても正確な位置決めが必要な技術分野などで、近年その開発が強く望まれている特性である。

固溶体

2種類以上の物質が互いに原子レベルで混ざり合い、全体が均一な固相となっているもの。

メスバウアー効果

ガンマ線の共鳴吸収現象を利用して固体の電子状態を調べる手法。鉄のメスバウアー効果を使うと、鉄イオンのイオン状態や磁気特性を調べることができる。

モット転移

バンド理論では金属と予想されるにも関わらず、電子間の強い相互作用により金属から絶縁体へと変化する現象。