藤吉 好則 理学研究科教授が日本学士院賞を受賞 (2008年3月13日)

藤吉 好則 理学研究科教授が日本学士院賞を受賞 (2008年3月13日)

  藤吉 好則 理学研究科教授に日本学士院賞が授与されることになりました。
  授賞式は,6月に日本学士院で行われる予定です。
  以下に藤吉 理学研究科教授の略歴,業績等を紹介します。

 藤吉 好則 教授は,昭和46年名古屋大学理学部化学科を卒業,同49年に京都大学大学院理学研究科に進学し,同57年に理学博士の学位を授与されました。昭和55年京都大学化学研究所教務職員,同60年同助手,同62年蛋白質工学研究所主任研究員,同63年同主席研究員,平成6年松下電器国際研究所リサーチディレクターを経て,同8年京都大学大学院理学研究科教授となり,構造生理学を専門として現在に至っています。また,平成11年より理化学研究所播磨連携メンブレンダイナミクス研究グループ生体マルチソームチームチームリーダー,同15年より同18年まで同グループリーダー,平成12年より同16年まで産業技術総合研究所生物情報解析研究センター高次構造解析チームチームリーダーも併任されました。

 今回の日本学士院賞受賞は,「極低温電子顕微鏡の開発による膜タンパク質の構造決定」に対するものです。藤吉教授は,極低温電子顕微鏡の開発を通じて,解析が困難であった膜タンパク質の構造解析を可能にし,生体内で重要な生理機能を担う種々の膜タンパク質の構造を明らかにしました。

 まず,電子線照射による試料の損傷を避ければ,電子顕微鏡が原子の配置を直接捉えるだけの分解能を持つことを実証し,この技術を膜タンパク質構造解析に応用しました。代表的な例として,水チャネルタンパク質であるアクアポリン-1,アクアポリン-0,アクアポリン-4等の解析が挙げられ,水の選択的透過というこれらの分子の生理的機能と構造との関係を明らかにしました。さらに藤吉教授は,ギャップ結合構成タンパク質の一つであるコネキシン26,神経筋接合部の受容体であるニコチン性アセチルコリン受容体等の構造を決め,最近は,単粒子解析法を活用して,電圧感受性Na-チャネル,IP3受容体などの構造も明らかにしました。

 藤吉教授の研究は,膜タンパク質の構造研究分野で世界をリードしており,構造生理学という新しい分野の創設に貢献しています。
これら一連の業績が高く評価され,昭和63年に瀬藤賞,平成17年に産学連携功労者科学技術政策担当大臣賞,山﨑貞一賞,慶應医学賞,同18年に島津賞を受賞,また同年,紫綬褒章も受章しています。