玉尾 皓平 名誉教授が日本学士院賞を受賞 (2007年3月2日)

玉尾 皓平 名誉教授が日本学士院賞を受賞 (2007年3月2日)

  このたび,玉尾 皓平名誉教授が日本学士院賞を受賞することになりました。
  授賞式は,6月に日本学士院で行われる予定です。
  以下に玉尾名誉教授の略歴,業績等を紹介します。

 玉尾 皓平名誉教授は,昭和40年京都大学工学部を卒業,同45年同大学大学院工学研究科博士課程を修了し,同年4月工学部合成化学科助手として採用され,助教授を経て,平成5年4月より化学研究所教授に就任しました。また同時に,大学院工学研究科物質エネルギー化学専攻協力講座を担当しました。平成17年に退職するまでの間,平成12年度から2年間は化学研究所所長,平成15年度から2年間は化学研究所附属元素科学国際研究センター長などを歴任しました。平成17年4月より,理化学研究所フロンティア研究システム長となり,現在に至っています。

 今回の受賞は,「有機典型元素化合物の高配位能を活用した化学反応性と物性の開拓」に関する業績によるもので,米国シカゴ大学山本 尚教授との共同研究です。分子設計によって構造と反応性の自在な調整が可能であるという有機典型元素化合物の特徴的な概念をもとに数々の有用な化学反応と機能性物質を開拓し,学術のみならず産業技術の進展に大きく貢献したことによります。

 玉尾名誉教授の研究は,「元素の特性に着目した物質創製」を基本概念とした元素科学に関する独創性の高い研究です。「熊田-玉尾反応」として知られるニッケル触媒による炭素-炭素結合形成法は,触媒的クロスカップリング反応という一大研究分野の礎となるもので,今日の物質創製に不可欠な手法として広く応用されています。また,今回受賞の対象となった高配位ケイ素の化学においては,広く「玉尾酸化」と呼ばれるケイ素-炭素結合の過酸化水素による酸化法の開発,さらにケイ素を含む環状化合物シロール類の合成法の開発と有機EL発光素子への応用など,有機合成化学から新機能性物質科学にわたる幅広い分野の科学技術の発展に多大な貢献を果たしています。

 これら一連の研究に対して,平成11年日本化学会賞,同14年米国化学会 F.S. Kipping 賞,東レ科学技術賞,同15年朝日賞,同16年紫綬褒章など多数の賞が授与されました。