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勝又直也 助教授が日本学士院学術奨励賞を受賞 (2005年3月22日)

  このたび、「日本学術振興会賞」を受賞した25名の若手研究者の中から、我が国の学術の発展に寄与することが特に期待される者5名以内に与えられる日本学士院学術奨励賞を勝又直也 人間・環境学研究科 助教授が受賞されることになりました。
  授賞式は、6月中旬日本学士院で行われる予定です。
  以下に勝又 助教授の略歴、業績等を紹介します。

 勝又直也 助教授は、平成6年東京大学文学部卒業、同10年にエルサレム・ヘブライ大学ヘブライ文学学科修士課程修了、同15年にエルサレム・ヘブライ大学ヘブライ文学学科博士課程修了、同年6月にエルサレム・ヘブライ大学PhDを授与されました。日本学術振興会特別研究員SPD(平成15年度)を経て、平成16年4月より京都大学大学院人間・環境学研究科助教授に就任しました。

 今回の受賞の対象となった業績は、中世ヘブライ文学を中心とした、地中海・中東の比較文学・比較文化研究です。従来日本でユダヤ学といえば旧約聖書学、近代ヨーロッパのユダヤ人問題、現代のイスラエル・パレスチナ問題との関連で研究してきました。勝又助教授は中世ヘブライ文学という日本では未開拓の分野に取り組み、カイロ・ゲニザ写本群をもとに中世ヘブライ語で書かれた宗教詩を解読校訂するという地味な文献学的研究において、国際的な業績をあげた。文献学的研究と同時に、ユダヤ教、イスラーム教、キリスト教という3つの一神教の相互影響関係という観点から、言語学、文学、宗教学などにわたる広範囲な文化交流史的研究をも一貫して推進してきました。

 具体的には例えば、10世紀イラクで活躍したユダヤ詩人ネヘミヤ・ベン・シュロモーのヘブライ語典礼詩の校訂を通して、詩人の思想にシリア・キリスト教の影響を見いだし、9世紀パレスチナのユダヤ詩人シュロモー・アルシンジャーリの典礼詩を校訂し、イスラム教支配下におけるユダヤ教とキリスト教との親近・反発関係を分析しました。また,10-11世紀パレスチナのユダヤ詩人シュムエル・ハシュリシの典礼詩のヘブライ語文体を分析して、地中海・中東各地のユダヤ人共同体間の言語文化的交流を解明しました。とりわけ顕著な最近の文化交流史的研究としては、11-12世紀イスラーム圏においてアラビア語、ペルシア語、ヘブライ語、シリア語で創作された歌謡物語のジャンル「マカーマート」の研究があります。勝又助教授はこの研究において、ユダヤ教とキリスト教という非イスラーム少数派の「マカーマート」文学に表現された、アイデンティティにかかわる言語文化的葛藤を実証的に分析しました。