DNAナノ空間内での酵素反応のコントロールと直接観察に成功

DNAナノ空間内での酵素反応のコントロールと直接観察に成功

2010年1月14日

 遠藤政幸 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)准教授、杉山弘 教授(理学研究科教授兼任)らの研究グループはDNA折り紙法を用いて、2次元DNA ナノ構造体「DNA フレーム」構造を新たに設計し、その中に張った状態の64塩基対と緩んだ状態の74塩基対2本の2本鎖DNAを導入しました。このDNAフレームを用いてメチル転移酵素(M.EcoRI)のDNA鎖への結合の様子を高速原子間力顕微鏡(AFM)によって直接観測しました。

 その結果、M.EcoRI は優先的に緩んだ状態の74塩基対DNAに結合することが示され、さらに、メチル化反応効率を調べると74塩基対の配列がよりメチル化されやすいことも明らかとなりました。M.EcoRI はDNA鎖を折り曲げることでメチル化反応を行うことが知られており、DNAフレーム構造を用いることによって2本鎖DNAの張力を制御することで、酵素反応がコントロールできることが初めて実験的に示されたことになります。今後様々な系に利用できる可能性が期待されます。

 論文は米国化学会誌(電子版)に掲載されました。


DNA折り紙法を用いたDNAフレームのデザイン。DNAフレームに組み込まれた64塩基対と74塩基対DNAそれぞれにM.EcoRI が結合したAFM像。

論文について

Regulation of DNA Methylation Using Different Tensions of Double Strands Constructed in a Defined DNA Nanostructure

Masayuki Endo 1,2, Yousuke Katsuda 2, Kumi Hidaka 2, and Hiroshi Sugiyama 1,2,3
1. Institute for Integrated Cell-Material Sciences (iCeMS), Kyoto University(京都大学 物質-細胞統合システム拠点)
2. Department of Chemistry, Graduate School of Science, Kyoto University(京都大学 理学研究科)
3. Japan Science and Technology Corporation (JST), CREST(科学技術振興機構 戦略的創造研究推進事業)

Journal of the American Chemical Society(※)(米国化学会誌)
DOI: 10.1021/ja907649w
Published online: January 15, 2010

(※) ある分野における雑誌の影響度を表す指標とされるインパクトファクターは8.091
Multidisciplinary Chemistry分野で127誌中7位(トムソン・ロイター社2008 Journal Citation Reports)