がん抑制遺伝子によるiPS細胞の樹立抑制メカニズムを解明 -樹立法改良に結びつく知見をNatureに報告-

がん抑制遺伝子によるiPS細胞の樹立抑制メカニズムを解明 -樹立法改良に結びつく知見をNatureに報告-

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用語解説

人工多能性幹細胞(iPS 細胞:induced pluripotent stem cell)

体細胞に特定因子を導入することにより樹立される、ES細胞に類似した多能性幹細胞。2006年に山中教授の研究グループにより、世界で初めてマウス体細胞を用いて樹立成功が報告された。2007年にヒトiPS細胞樹立成功が発表されている。

胚性幹細胞(ES細胞:embryonic stem cell)

ES細胞は受精後6、7日目の胚盤胞から細胞を取り出し、それを培養することによって作製される代表的な多能性幹細胞の一つで、あらゆる組織の細胞に分化することができる。しかし、受精卵を破壊する必要があり、患者自身の細胞から作製することが困難なこと、免疫拒絶の問題が指摘されている。

p53

p53遺伝子は代表的ながん抑制遺伝子の一つ。細胞の恒常性の維持やアポトーシス(細胞死)誘導といった重要な役割を持つ。細胞のがん化には複数のがん遺伝子とがん抑制遺伝子の変化が必要だが、p53遺伝子は悪性腫瘍において最も高頻度に異常が認められている。

レトロウイルスベクター

ベクターとは、細胞外から内部へ遺伝子を導入する際の「運び屋」を指す。ウイルス由来のベクターは、遺伝子導入効率の高さから盛んに開発されてきた。目的遺伝子をウイルスに組み込み、細胞に感染させることにより遺伝子を導入する。レトロウイルスベクターは、このウイルスベクターの1種類として確立されたもので、宿主の細胞に感染したあと、宿主のDNAのなかに入り込み、自らのウイルスを増殖させる性質を利用するものである。

プラスミドベクター

プラスミドベクターは、試薬や電気穿孔などの方法で宿主の細胞に導入され、外来遺伝子を染色体外で発現させる。導入効率は、一般にレトロウイルスベクターなどのウイルスベクターの方が高いとされる。

マイクロアレイ

一度に膨大な数のDNAやたんぱく質を網羅的に検査することができる解析技術。

siRNA

Small interfering RNAの略。Shortまたはsilencing RNAとも言う。特定の遺伝子の発現を妨げる機能をもつ。

フローサイトメ-ター

流動細胞計測法のこと。レーザー光を用いて光散乱や蛍光測定を行うことにより、水流の中を通過する単一細胞の大きさ、DNA量など、細胞の生物学的特徴を構成的に解析することができる。

ドミナント・ネガティブ変異体

正常な遺伝子産物(タンパク質)に対して優勢に働き、正常タンパク質の機能を阻害する変異体。様々なドミナント・ネガティブ変異体が作製され、細胞生物学の実験に利用されている。

ヘテロ欠損型

1対の遺伝子に違いがある配偶子同士が接合して生じた遺伝子構成をもつ個体をヘテロ接合型と呼ばれる。ヘテロ接合型で、片方の遺伝子が欠損している個体をヘテロ欠損型という。本文では、p53の片方のコピーが欠損している型を指す。

キメラマウス

2対以上の親に由来する2つ以上の胚またはその一部からできた個体をキメラという。本論文のキメラマウスは、iPS細胞を胚に移植して作製したマウスのことを言う。

shRNA

Small または short hairpin RNAと呼ばれ、遺伝子発現を抑止させる機能をもつRNA。