東京オフィス開所記念イベント:「まったりと深める京大の学び」を開催しました。(2009年12月18日・19日)

東京オフィス開所記念イベント:「まったりと深める京大の学び」を開催しました。(2009年12月18日・19日)

 10月、11月に引き続き、東京オフィスの開所を記念して「まったりと深める京大の学び」をテーマとしたイベントを大野照文 総合博物館長と塩瀬隆之 同准教授のコーディネートのもと開催しました。

 千年の都である京の文化の諸相と連関して育まれた京都大学の学風は、言葉では尽くせない多面的な学びの世界を包含しています。本イベントでは、その一つである京都大学やその周辺の研究者が放つユニークな斬新さの源となっている「まったりと深める京大の学び」をテーマとして、2日間に渡り講演会やワークショップを行いました。

 12月18日(金曜日)には、日置弘一郎 経営管理大学院教授、井上章一 国際日本文化研究センター教授(本学卒業生)のお二人により、「京都」に視点を置きつつ全く異なる角度からみた講演を行い、約70名の参加がありました。
  日置教授からは、「京のもてなし文化」と題して、観光は京都の主たる産業である一方、観光客と京都との関係について、いわゆる観光客むけの質の悪いサービスに高い対価を払ってしまったり、宗教施設である寺院にバリアフリーを要求したり、という負の側面を紹介しつつ、高い文化を誇る京都のもてなしは、訪問者にもそれを味わうためのサービス・リテラシーが必要との講演がありました。本講演では、京都の和菓子や野菜などの細やかな分類も紹介され、日置教授と参加者のあいだでは活発な質疑応答が行われました。
  井上教授からは、「京都、そして世界からとらえる日本の歴史」と題して日本の地域区分や都市名には京都を日本の中心とした時の呼び名が今でも用いられていることや、日本の都であった京都と世界の文明の起源であるヨーロッパや中国の歴史を比較しつつ、日本で通説となっている歴史区分とは異なる歴史区分も考えられるという講演がありました。本講演では、歴史とは現在通説となっているもの以外にも視点や軸を変えることで別の考え方ができるというメッセージが伝えられました。

 12月19日(土曜日)には、廣瀬浩二郎 国立民族学博物館准教授(本学卒業生)、大野教授、塩瀬准教授の3名がそれぞれ「まったりと触って深める学びと文化の新たなかたち」をテーマとした体験型ワークショップを行い、参加者はのべ40名を超えました。
  廣瀬准教授からは、“さわる”体験型ワークショップ「手学問のすゝめ」~『続・平家物語』“攻(せめ)”の巻が始まる!~と題してのワークショップを行いました。16名の参加者は、アイマスクをすることで視覚を使わずに、与えられた民族楽器やお土産品を手で触って何か説明したり、琵琶法師の語る平家物語に耳を澄ませたり、浮き彫りのついた絵や国旗を指でなぞって何が表わされているか言い当てることを体験し、視覚にたよる日常から、手でものに触れる、触覚を使って物を感じることの可能性を探りました。
  大野教授からは「サワッテ ミル カイ」と題して目の見えない方を対象としたワークショップを行いました。参加者各々が精巧なハマグリのぬいぐるみを触り言葉で伝えあいながら、ハマグリのつくりや各箇所の仕組みや働きを学習しました。そして、このようなワークショップでの作業が、仮説から検証への科学的考え方の基礎につながることが示されました。
  塩瀬准教授からは「見えない人と学ぶハンズオン・サイエンス」と題して、目の見えない方と見える方とが一緒のグループとなってワークショップを行いました。参加者全員で、目で見たものや触った感触を言葉や文字にして伝え合うことに挑戦し、その後自分のグループの石と相手グループの石をそれぞれ触り自分のグループの石がどちらかを当てるグループ対抗戦なども行いました。このような体験を通じて、塩瀬准教授からは既視感の触覚版である既触感(デジャブ)のという考え方が示されました。


熱心に耳を傾ける参加者

講演をする日置教授

講演をする井上教授

“さわる”体験型ワークショップ「手学問のすゝめ」

ワークショップ「サワッテ ミル カイ」

ワークショップ「見えない人と学ぶハンズオン・サイエンス」