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京大の「実は!」Vol.16 「京大生の実は! -FILE.1 科学者と芸術家のコラボ企画に挑む学生たちに密着!-」

 「京大生」。みなさんはそう聞いて、どんなイメージを思い浮かべますか?

自由
活動的
変わってる
頭がいい!

 ・・・などなど、世間のイメージはさまざまですが、京大の基本理念は「京都大学は、創立以来築いてきた自由の学風を継承し、発展させつつ、多元的な課題の解決に挑戦し、地球社会の調和ある共存に貢献するため、自由と調和を基礎に、ここに基本理念を定める」。

 この基本理念に則り、さまざまな活動に全力で挑む! それこそが京大生といえましょう。

 シリーズ「京大生の実は!」では、学業に、課外活動にと、あらゆる方面で活躍をする現役京大生たちを紹介していきます!

 「そんな京大生のイメージをまさに体現する、おもしろい企画を仕掛けている学生たちがいる!」

 との情報をかぎつけて、今回はそのうわさの京大生と、彼らが手がける企画「科学と芸術の交差展」に密着しました。

 学生の本分である学業だけでなく、さまざまな課外活動に積極的に主体的に取り組む学生たち。彼らが仕掛ける、「科学と芸術の交差展」とは?!

学生たちがつくる、科学者と芸術家のコラボ企画 「科学と芸術の交差展」って・・・?

 本企画の発起人であり、リーダーを務める牧功一郎さん(工学研究科(再生医科学研究所)修士2回生)曰く、きっかけは、「分野横断プラットフォーム構築企画(研究大学強化促進事業「百家争鳴」プログラム)」(学際融合研究教育推進センター主催)への応募がきっかけ。もともと京都造形芸術大学に友達がいたことから、この企画の応募を思いついたそうです。そして見事採択され、本企画を実現する運びとなりました。

「科学者と芸術家の、異なる視点の交差」。 そこから見えるものとは・・・?

 「見ないと始まらない 見ようとしないと始まらない -ガリレオ・ガリレイ」

 ガリレオの名言をキャッチコピーの一つに掲げ、彼らが挑むのは、「科学者と芸術家の、異なる視点の交差」。科学者(主に京大生)・芸術家(京都造形芸術大学生)を目指す学生16人が、ペアで絵画作品を制作します。

 科学者と芸術家という背景の異なる両者が、絵画制作を経て、それぞれの相手からどのような刺激を受け、何を見出しだのか?

 そこで見出したものは、科学と芸術が今抱える問題と目指すべき未来への手がかりとなるかもしれません。

企画の実施までを密着レポート! 

 今回は、企画実施にいたるまでの、彼らの動きに密着させてもらいました。

まずは本企画の制作メンバーをご紹介! 科学者と芸術家、それぞれを目指す学生がペアを組んで絵画を制作します。


本企画の制作メンバー。左が科学者、右が芸術家

STEP1! 制作に向けてのミーティング&各ペアのテーマと内容発表

 まずはペアごとに、制作に向けての方向性やコンセプトなどを固めるミーティングを実施。科学者と芸術家が、初めて向き合う瞬間。ここで、それぞれの視点や感性を徹底的に議論し合い、一つの創作に向けた方向性を定めていくのです。

■研究もさまざま、表現もさまざま。 あるペアの場合は。

  • 科学者(京大生): 僕のテーマは「からだの組織が「力」で折り紙のように畳まれていく仕組み」
  • 芸術家(京造大生): 私は、普段「見過ごしがち」な自然・生命の美しさ、をテーマにしています。
  • 科学者&芸術家: 「私たちの体を構成する細胞は次々と生まれ、また死んでゆく。その数は常に釣り合っていて、常に人は生き続ける。とめどない生死の循環に力強さを感じるね。そんな細胞がまさに力を発してダイナミックに動くのが面白いね」

・・・そんな対話から、この「生死の循環の力強さ」をテーマにし、折り紙をひろげたような、地層の積み重なりのような絵を制作することにしたそうです。

 それは普段生きているときには気づかない、自分の体に備わる「力」を、見る側に気づかせるような絵。


(左)違う大学に通うため、ペアごとに時間をみつけてミーティング。(中央・右)対話の中から出てくる、「科学者的」「芸術家的」思考や視点からキーワードやヒントを書き出し、徹底議論。一つの方向性を見出していく、企画のキモとなる大切な作業。この作業の困難度合は、ペアによって全く異なったそう。


各ペアごとの方向性が定まったところで、全員集合し、テーマと内容発表会。(左)歴史学的視点から浮かんだテーマ「スラム街」と、マリリンモンローの画を融合し、アメリカのカオスな様相を表現することにしたペア。(中央・右)方向性を見出すまでに、互いの意見の食い違いでかなり苦戦したというペア。何度もぶつかり合いながら、互いの要素を取り入れたカタチへの着地に至ったとか。発表に向けて、プレゼンシートまで持ち込む熱心さ。


(左)「生物学」「ミクロ」など、ボードには科学者ならではのキーワードが。(中央)なかなか合致点が見出せず、苦戦したというペア。ある日突然降りてきた芸術家のひらめきから、一気に形を帯びてきたそう。最終的には、ヨルダンの王様をテーマに創作することに。(右)各々のペアの斬新な方向性発表にみんな興味津々

番外編! ~ミーティング夜の部~


ミーティング夜の部でも、科学者と芸術家の論議が白熱。意外と昼間より議論が熱くなったりするものですよね。左の人、目が据わってますけど・・・(「理性は保っています。」(本人談))

STEP2! ペアごとに創作スタート

 方向性が固まったら、早速ペアごとに創作スタート。主には芸術家が創作するペアが多いものの、何度も会い、途中経過を見ながら意見を出し合いつつ進めていきます。ペアごとの進捗は、やっぱりみんな完成まで極秘とのこと。

 

STEP3! パーテーション搬出作業など

 創作とあわせて、会場設営のための準備にも着手。この日は、京都造形芸術大学で作ったパーテーションを搬出するための作業を実施。


パネルを外に出す際には、こんなプチアクシデントも。(左から)「これ、キチキチで出ないんちゃう・・・?」、「いや、ギリギリいけるはずや!」、「おお、なんとか出た!」、「出ました~っ!」


(左・中央)ゴミ袋をカットして切り開き、テープでつなぎ合わせ、一枚の大きなビニールシートに。(右)出来たシートで、パネルを包みます。「あるもので工夫する」。これも創作の醍醐味!


(左・中央)資材の梱包も何とか完了。あとは搬出しやすいようコンパクトにまとめます。(右)やっと完成!感無量!

STEP4! 事前準備(搬入作業、展示会場設営など)

 開催前日は、会場設営も大詰め。パーテーションの館内設置、完成した作品の搬入・設置、最終の会場セッティングなどを実施。


(左)苦戦して搬入したパーテーションも無事館内に設置。(中央)ご挨拶のパネルもバッチリ手作りしました!(右)そしてついに、各ペアの作品のお披露目。「ペアごとにそれぞれ全然違う作品に仕上がっていて、おもしろいね!」


(左・中央)渾身の作品をチラッとご紹介。それぞれの絵に込められたテーマや思いの説明も、作品横にセットで展示されます。(右)展示の配置も重要なポイント。みんなで意見を出し合いながら定めていきます。

科学者さん、芸術家さん、交差して何が見えた?

それぞれの気づきを、自らの今後の道にどう生かすか?それがこの企画の大きな意義です。
― 牧功一郎(京大/工)

科学者と芸術家が共感する部分は、要らない部分を排除した、哲学に近いところがあると思いました。
それぞれの気づきは、絵の制作を経て、自らの今後の道にどう生かすか?というところに出たんじゃないかと思います。
例えば僕なら、自分がこれから研究を行う上で、芸術家が最大限発揮するような想像力が特に必要と感じました。基礎研究をやるうえでも、この研究、将来これに使えるかも?といった考え方のあるなしで、その研究そのものの向く先が大きく変わると思います。そのためにはまず隣の畑を見ないといけないし、そのうえで自分はここを掘るんだ! という信念をもって研究しなければいけないと思いました。

「世界を自分なりのイメージで捉える」という共通認識をカタチに。
― 奥田俊介(京大/人環)

はじめは、歴史学と芸術というあまりなじみのない両分野をいかにつなげるかということを考え、お互いに制作、研究内容について伝え合いました。その結果、私たちは共に「世界を自分なりのイメージで捉える」という共通認識を持っていることがわかりました。そして、私の研究対象であるアメリカの一時代、繁栄するアメリカという「明」と、隠された貧困や黒人、女性の差別など「暗」の部分が複雑に交差した「カオス」な様相を呈した1950~60年代を、それを最もよく表していると思われる「写真」を支持体に転写し、さらにイメージを加筆する事によって描き出そうという結論に達しました。
また、厳密には科学と言えない「歴史学」が芸術と科学(特に社会科学)を結びつける懸け橋になれるのではないか、ということも考えました。政治学のみならず、社会学、メディア、カルチュラル・スタディーズ(文化研究)などさまざまな要素を内包する歴史学は、その分析手法において科学と共通しており、また世界を色のように「イメージ」として捉えるという点では芸術と親和性を持っているのではないか、と考えられます。

「教え上手、伝え上手」な科学者の世界にひきこまれました。
― 佃恵美(京造/油画)

今回の企画でペアの方と接して感じたことは、教え方・伝え方が上手ということです。わたしは歴史全体にあまり興味がなかったのですが、今回奥田さんからアメリカの歴史についてのお話をお聞きしたとき、たくさん資料を使ってくれたり質問をするとさらに補足してくれたりと、こちらもどんどん知りたくなるような教え方で、上手だなぁ! と思うことが多かったです。わたしが感覚的で曖昧なものいいをしてしまうのでさらにそう感じたのかもしれません。

ことばがカタチになるおもしろさを体感。
― 東純平(阪大/生)

本の挿絵みたいに、話した内容が絵になっていくのが面白かった。

初めて見る顕微鏡の微細な世界が、新鮮で斬新でした!
― 神谷真千(京造/日本画)

顕微鏡で骨がどう生えているかなどを見て、その骨を近付けたり遠ざけたりして見る事ができたりピンセットで触った時の骨の動きも見ることが出来て新鮮で面白かったです!!

科学者の、客観的でクールな視点は意外でした。
― 木地彩(京造/油画)

私は薬学部の方と組んだので、どんな細密な研究が聞けるかドキドキしてたのですが、意外にも返ってきた答えは「科学を俯瞰することで新しい可能性を見つけたい」という大きな視野でした。
話し合って思ったことは、基本的な考え方がほとんど似ていたということです。唯一の考え方(見方)の違いは、(例え話ですが)何か二つを比較する際、私は天秤を使って図り、比較するのに対して、秋柴さんは「天秤で比較したら全く別のものとして比較出来ない。同じラインに持ってきている時点で客観的な視野ではない、だから私は天秤を使って比較するのではなく、ただそこに置いて並べて比較したい。」と述べていたことです。
それは「愛の反対は憎しみ」ではなく「愛の反対は無頓着」というふうに、主観的な見方ではないクールな見方だなと思いました。今回の制作は、そのような客観的な視点を生かして絵画に取り込もうと意識的に制作しています。

科学者の頭の中を、すぐにカタチにする芸術家はすごい。
― 福富雄一(京大/理)

かな子さんはさまざまな方面の作品(絵画や造形作品)を創られていて、自分なりの表現の方法を確立されていらっしゃると思いました。ですから、僕の考えていることもどのように表現すれば良いかをすぐに思いつかれましたので、そこが凄いと思いました。あと、エピソードに関してですが、かな子さんが以前は栄養士を目指されていたということが意外で、驚きました。

芸術家のひらめきの唐突さ、展開力に、終始驚きでした。
― 渡辺駿(京大/アジア・アフリカ研)

ペア組みのミーティングの際には、研究/制作対象が全然結び付かず相手にされていなかったのに、翌日唐突に「アイデアが浮かんだからペアを組もう」と言われて驚いたことが忘れられない。それ以降もひらめきの唐突さ、展開力に驚かされてばかりです。

芸術家の制作への情熱はすごい。
― 黒川達矢(京大/理)

驚いたことは、芸術家として、もはや仕事と呼んでも差し支えないくらい、制作に専念している、ということです。

新しく開けた世界を、今後の制作にも生かしていきたい。
― 藤井遥(京造/日本画)

私は制作で動植物をモチーフとすることが多いのですが、その背景にある生物の進化の歴史や仕組みなど今まで知らなかった世界がとても面白く、自身の視野が広がりました。今後の制作にも生かしていきたいと思います。

 「交差」という、異なる背景の融合により生み出されたものは、これまで知らなかった新たな世界や、モノの見方、感じ方だったり、未開拓の自分だったり。

 彼らがこの企画で得たものは、交差する前の自分とはちょっと違う、新しい自分自身なのかもしれません。

 今回は、写真撮影など全面的に学生の協力をいただきました。ありがとうございました!

企画メンバーと、応援に駆け付けてくださった総合博物館の大野館長と一緒に記念撮影!

企画展について

科学と芸術の交差展 -サイエンティストとアーティストのペアによる絵画展-

  • 開催日: 開催中~3月30日(日)
    会場: 京都大学総合博物館エントランス(9:30~16:00(最終日14:00まで))
  • 企画に関するお問い合わせ
    牧功一郎(京都大学工学研究科(再生研))
    E-mail:science.cross.art*gmail.com(*を@に変えてください)
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