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京大の「実は!」Vol.13 「京大の、おもしろ研究者の実は! -FILE.1 久保田信 フィールド科学教育研究センター准教授-」

 京大の「実は!」な宝物は山ほどありますが、なんといっても忘れてはならないのが、世界に誇るすばらしい研究者たち。

 あらゆる研究において、その分野に人生をかけて挑み、大きな成果を世界に発信する研究者たちが、京大にはたくさんいます。

 そんな研究者たちは、独自のアイデアで様々な取り組みを行い、研究の素晴らしさや価値を広く発信しています。

 シリーズ「京大の、おもしろ研究者の実は!」では、京大ならではのユニークで斬新な取り組みをしている、でも実は世界的にスゴイ研究者をご紹介していきます!

不老不死の夢を自作の歌にのせて。歌って踊れる、ベニクラゲ研究の世界的権威!
FILE.1 久保田信 フィールド科学教育研究センター准教授

様々な顔を持つ久保田准教授。右下は、通称「ベニクラゲマン」

  • 京大には、「不老不死のベニクラゲ」なる生物の研究をしている先生がいるらしい。
  • しかも、自作の歌をたくさん作り、作るだけでなく、コスチュームを身に纏い、自身で歌っているらしい。

 「不老不死のベニクラゲ」「自作の歌」・・・?

 そんな、謎のベールに覆われた先生に会わないわけにはいかない! と、南紀白浜まで会いに行きました。

 うわさのベニクラゲ先生は、フィールド科学教育研究センター(海洋生態系部門基礎海洋生物学分野)の、久保田信 准教授。

 久保田先生の主な研究領域は、腔腸動物の生物学、特に不死のベニクラゲと早逝のカイヤドリヒドラクラゲの生物学です。

 中でも最も心血を注いでいる研究対象が、「不老不死のベニクラゲ」。先生は、日本中のベニクラゲを研究し、この稀少な多細胞動物のベニクラゲを何度も甦らせた、実はスゴイ研究者なのです!

 さらに、そんな研究へのアツイ思いを込めた歌まで手がけるという個性派。今回はベニクラゲ先生こと、久保田准教授の「実は!」な魅力に迫ります!

実はスゴイ! その研究内容とは?

「ベニクラゲ若返り」の世界記録を樹立! その研究の中身とは・・・?


ベニクラゲの成体。体長わずか1cm

 ベニクラゲは、サンゴやイソギンチャクの仲間で刺胞動物門に属します。毒針を触手に無数装填し、海の微小な動物を射止めて食べる肉食動物ですが、人間に害を与えるほど毒性は強くありません。世界中の暖かい海に分布し、地域ごとに色々な種に分かれています。

 地球上には、約140万種の多細胞動物がいますが、不老不死性という特殊能力をもつのはベニクラゲとヤワラクラゲだけだそうです。後者は、成熟前の段階でしか若返りの証明がまだされていないため、ベニクラゲが最も能力が優れているといえます。

 ベニクラゲの不老不死性は、1996年にイタリアのレッチェ大学の研究者が初めて発見し、これに感銘を受けた久保田先生は、「人類の夢、不老不死のヒントが隠されているかもしれない!」とますます研究に没頭するようになりました。

 そして、2011年春までの2年間で、1個体を10回も若返らせることに成功。「ベニクラゲ若返り」の世界記録を樹立し、「ベニクラゲ研究の第一人者」として確固たる存在となりました。


「ベニクラゲの若返りの過程」

(1)成体(雌雄異体の成熟クラゲ)が有性生殖し、受精卵から育ったプラヌラ幼生が、岩などに付着して植物の根のような走根を伸ばし、若い世代の「ポリプ」が多数伸び上がり、無性生殖で増えていきます。
(2)普通、有性生殖後の成体は死を迎え溶け去りますが、ベニクラゲは溶けず肉団子状(右端の黄色い塊)になり(退化)、それから「根」を延ばし再びポリプへと若返ります。この若返り現象はわずか2~3日で起こります。
(3)その後、ポリプがクラゲ芽を形成し、やがて若いクラゲとして分離して海中へ泳ぎ出し、おとなのクラゲとなり生活をくり返します。個体として自然死しない不老不死なのです。

大切なのは、相手(=研究対象)を知ること。日々の飼育活動が何よりも研究の要。

 そんな久保田先生が何よりも大切にするのが、日々の飼育活動です。

 久保田先生の1日は、クラゲとともに始まり、クラゲとともに終わります。毎日数時間をかけてクラゲやポリプに餌やりをした後、水替えや飼育容器を掃除します。クラゲが若い時や、クラゲからポリプに若返ったばかりの時が一番苦労が多く、微小な餌(アルテミア幼生)を針でちぎり細かくして、口までもっていって食べさせてあげます。食べ過ぎると死んでしまうので餌の量のさじかげんが大事。不消化物の排出がうまくできないと死ぬため、水流をつくって新鮮な海水を常時供給しているそう。また、水温の管理も大事だそうです。

 生物には、それぞれ性質に見合った最適な飼育の仕方があり、「相手(=研究対象)を知ること」が何よりも必要不可欠だと言う先生。日々注ぐ愛情の賜物が、研究成果へと繋がっていることがひしひしと伝わってきます。

 こうして、多細胞動物中で唯一「永遠の生命」をもつとされるベニクラゲに関する長年の研究を積み重ね、「ベニクラゲの不老不死の仕組みを解き明かせば、人類も不老不死を獲得できるかもしれない!」と久保田先生は日々研究に取り組んでいます。

久保田先生の、実はここがおもしろい!

生物世界へのアツイ思いを込めた自作の歌は、なんと29作!

 久保田先生といえば、なんと言っても、自作の歌で生物への思いや研究内容を発信する突き抜けた個性が魅力。

 不老不死のベニクラゲのみならず、超短命のカイヤドリヒドラをはじめ、様々なクラゲや海洋生物をみつめ続けてきた久保田先生。

 尊大なる生物世界の神秘と、生き物たちへの敬意と愛情を多くの人々に伝えたい! と、8年前から始めたのが、「歌をつくること」、さらには「歌うこと」。その自作の歌が、今では29作にものぼるそうです。


(左)先生から頂いたうわさのDVDとCD(上:ジャケット表、下:同裏)。(中央)広報室でもドキドキの視聴会を敢行。視聴後は、「ベニベニ」のフレーズが脳裏から離れず・・・。(右)ベニクラゲマンに扮する際に着用するベニクラゲイラスト入りのTシャツ。イラストは先生オリジナル!

 代表作「ベニクラゲ音頭」をはじめ、「生命(いのち)・・・永遠に」(ちょっと切ないバラード調)、「ぼくの名前は、ベニクラゲ」(アップテンポな戦隊ヒーロー調)など、どれも一度聴いたら忘れることの出来ないインパクトです。

 歌を聴けば、知らぬ間に海洋生物の知識が広がり、不老不死のベニクラゲの生態が学べる・・・。そして気付けば、生物のトリコになっている・・・。そんな、すばらしき学術教材でもあるのです。

 そして、とっておきの時に身に纏う「ベニクラゲマンの衣装」にも、「実は!」なこだわりが。

 白衣の中に着用している、ベニクラゲイラスト入りのTシャツ。これは「自身の研究に対する初心を忘れないため」という思いを込めた、初心者マークなんだとか。常に初心を忘れない、先生の研究に対する真摯な思いが垣間見られます。

 とにかく、生き物が好きで、研究が好きでたまらない!そんな純粋な気持ちが全身からみなぎる先生でした。

▼久保田信「海洋生物の歌と本」の詳細はこちらから。
http://www.benikurage.com/

研究者に質問!コーナー

Q: 研究マストアイテムは?

― 普段、携帯しているものは、「デジカメ3種、蓋付ポリ容器、光源付携帯顕微鏡、プランクトンネット、柄付き針、スポイト、特製スライドグラス、塩化マグネシウム、ホルマリン(永久固定標本用)」。これで常に生物を採取して、現場から彼らをじっくり調べます。


久保田先生の7つ道具をご紹介!

クラゲを採取するときは、(1)のプランクトンネットでクラゲを捕獲し、(2)の蓋付ポリ容器に入れ、(3)のスポイト(またはスプーン)を使ってクラゲを吸い取り(場合によっては、数%の(8)塩化マグネシウムで麻酔をかける)、(10)の携帯顕微鏡で大形クラゲを選別し、(4)の容器へ。(5)のピペットで小形クラゲを吸い取り、(6)の容器に収容。餌やりは、(7)の柄付き針で餌を割いてクラゲに食べさせます。大形クラゲの大きさは(9)の物差しで測ります。

Q: 1日のスケジュールをおしえてください!

― 研究→朝食→温泉→研究→昼食→研究→夕食→カラオケ→温泉

Q: 研究者の夢

― 不死になって若返って少なくとも動物を全て知りたい! 植物も菌類も・・・生物すべて。

研究の今後の展望

 ベニクラゲのテロメアの修復機構の証明と全ゲノムの解読、若返る細胞の分化転換の遺伝子的解析など、究極的にはiPS細胞が人の再生医療に役立った後に、人類の夢である若返りやアンチエイジングへの応用を目指したい。

研究者プロフィール

略歴

1975年 4月 北海道大学大学院理学研究科動物学専攻入学
1981年 6月 同修了、理学博士(北海道大学)を授与
1982年 6月 北海道大学理学部助手に採用
1989年 4月 北海道大学理学部講師に昇任
1992年 1月 京都大学理学部附属瀬戸臨海実験所助教授に昇任
1998年 4月 京都大学大学院理学研究科附属瀬戸臨海実験所助教授に配置換
2003年 4月 京都大学フィ-ルド科学教育センタ- 瀬戸臨海実験所助教授に配置換
2007年 4月 京都大学フィ-ルド科学教育センタ- 瀬戸臨海実験所准教授に配置換  
現在に至る

論文、講演、著書情報

http://www.seto.kyoto-u.ac.jp/shinkubo/shinkubo_home/gyoseki.html

KURENAIアクセスURL(フィールド科学教育研究センター)

http://hdl.handle.net/2433/126668

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