膵臓と肝臓をつなぐ血糖調節のしくみを解明―2型糖尿病の複雑な病態から新治療へ―

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研究者名

Muhammad Fauzi

概要

 京都大学大学院医学研究科の村上隆亮助教、ムハンマド・ファウジ博士研究員、矢部大介教授らの研究グループは、膵臓と肝臓に共通して働くタンパク質CA8が、IP3R1を介する細胞内カルシウムシグナルの強さを調節し、食後のインスリン分泌と空腹時の肝糖産生をともに制御することを明らかにしました。CA8を欠くマウスでは両者が同時に増加し、肥満・2型糖尿病モデルではCA8が膵島で増加する一方、肝細胞では減少するという逆方向の変化を示しました。さらに、肝臓でCA8を回復させると過剰な糖産生と空腹時血糖が抑えられました。これらの結果は、2型糖尿病では膵臓と肝臓で同じ調節因子が異なる方向に変化し、インスリン分泌低下と過剰な肝糖産生という複数の異常が重なり合うことを示しています。本成果は、糖尿病の病態が複雑で治療が難しい理由の一端を明らかにするものであり、今後、膵臓と肝臓を一つの血糖調節システムとして捉え、それぞれの病態に応じて適切に制御する新たな糖尿病治療の開発につながることが期待されます。

 本研究成果は、2026年10月9日午後2時(米国東部標準時)に米国の国際学術誌「Science Advances」にオンライン掲載されました。

画像
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膵臓と肝臓が協調して血糖を維持する仕組みと、2型糖尿病モデルでみられた臓器間の逆方向の変化。食後は膵β細胞からのインスリン分泌、空腹時は肝臓からの糖産生が血糖値を調節します。2型糖尿病モデルではCA8が膵島で増加し肝臓で減少し、インスリン分泌低下と過剰な肝糖産生を同時に招く可能性が示されました。肝臓でCA8を回復させると過剰な糖産生が抑えられました。本成果は、膵臓と肝臓の相互関係を踏まえ、それぞれの病態に応じて適切に制御する新たな治療戦略の可能性を示します。(作成:研究グループ/図版作成支援:OpenAI ChatGPT[GPT-5.6 Sol])

研究者のコメント

「2型糖尿病では、膵β細胞のインスリン分泌低下と肝臓の糖産生亢進が同時に存在します。今回、両者を調節する共通のシグナル制御因子が、糖尿病では膵臓と肝臓で逆方向に変化することが分かりました。これは、糖尿病の病態が複雑で治療が難しい理由の一端を示す発見です。膵臓と肝臓を一つの血糖調節システムとして捉え、それぞれの病態に応じて適切に働きかける新しい治療法の開発につなげたいと考えています。」(村上隆亮)

書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1126/sciadv.aeh4948

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/303931

【書誌情報】
Muhammad Fauzi, Takaaki Murakami, Ryota Usui, Ainur Botagarova, Daisuke Otani, Kentarou Sakaki, Shinsuke Tokumoto, Toshinori Imaizumi, Hisato Tatsuoka, Masahito Ogura, Jonathan Campbell, Nobuya Inagaki, Daisuke Yabe (2026). Carbonic anhydrase VIII regulates IP3R1-dependent Ca²⁺ signaling to coordinate insulin secretion and hepatic glucose production. Science Advances, 12, 41, eaeh4948.