一方向にのみ電気抵抗がゼロとなる超伝導ダイオード効果を発見 -エネルギー非散逸な電子回路の実現に向け期待-

ターゲット
公開日

小野輝男 化学研究所教授、安藤冬希 同博士課程学生(研究当時)らの研究グループは、柳瀬陽一 理学研究科教授、荒川智紀 大阪大学助教らと共同で、非対称構造を有する超伝導人工格子において、一方向にのみ電気抵抗がゼロとなる超伝導ダイオード効果を初めて観測しました。

ダイオードとは、順方向に電流をよく流す一方で逆方向にはほとんど流さない特性を持つ素子であり、整流器・混合器・光検出器など数多くの電子部品に半導体ダイオードが利用されています。しかし、半導体の電気抵抗はゼロでない有限の値を持つため、各部品におけるエネルギー損失の問題が避けられません。そこで、半導体ではなく電気抵抗ゼロの超伝導体にダイオードの特性を付与すること、即ち超伝導ダイオードの実現が望まれていました。

本研究では、ニオブ(Nb)層、バナジウム(V)層、タンタル(Ta)層から構成される非対称構造を有した超伝導人工格子において、臨界電流の大きさが電流方向に依存することを発見し、超伝導ダイオード効果を実証しました。本成果は、エネルギー損失の極めて小さい電子回路の実現へ貢献することが期待されます。

本研究成果は、2020年8月20日に、国際学術誌「Nature」のオンライン版に掲載されました。

図:本研究の概要図

詳しい研究内容について

書誌情報

【DOI】 https://doi.org/10.1038/s41586-020-2590-4

Fuyuki Ando, Yuta Miyasaka, Tian Li, Jun Ishizuka, Tomonori Arakawa, Yoichi Shiota, Takahiro Moriyama, Youichi Yanase & Teruo Ono (2020). Observation of superconducting diode effect. Nature, 584(7821), 373-376.

  • 日刊工業新聞(8月20日 19面)および毎日新聞(9月13日 28面)に掲載されました。