塵の向こうの巨大爆発 -アルマ望遠鏡で探るガンマ線バーストの発生環境-

ターゲット
公開日

2014年6月12日

太田耕司 理学研究科教授、廿日出文洋 国立天文台チリ観測所特任助教(元京都大学理学研究科 日本学術振興会特別研究員)らの研究チームは、ガンマ線バーストGRB 020819B(距離は約43億光年)とGRB 051022(距離は約69億光年)が出現した二つの銀河をアルマ望遠鏡で観測し、分子ガスからの電波を検出することに世界で初めて成功しました。さらに、今回観測したガンマ線バーストが、驚くほど塵の多い環境で発生したこともわかりました。

本研究成果は、英国の科学雑誌「ネイチャー」の2014年6月12日号に掲載されました。

研究者からのコメント

太田教授

ガンマ線バーストが出現した銀河における分子ガスの探査を始めて苦節約10年。

ついに検出に成功!と喜んだのも束の間。ナント、肝心のガンマ線バーストが出現した場所には分子ガスは見あたらず、逆に塵が異常に多い環境であるという、予想だにしなかった結果となり、びっくり仰天しました。このような現象が一般にみられるのかどうか、その原因は何かなど、今後の研究が望まれます。

概要

ガンマ線バーストはガンマ線の閃光で、宇宙で最も激しい爆発現象と考えられています。ガンマ線バーストは通常0.01秒から数分間継続し、現在では1日におよそ1回の割合で観測されています。ガンマ線バースト発生直後に観測される光を詳しく分析すると、数十億光年という非常に遠方で発生しているものが多いこともわかりました。遠方宇宙の性質を探る道具としても、ガンマ線バーストは大きな注目を集めています。

本研究チームは、ガンマ線バーストの出現した銀河(母銀河)に含まれるガスや塵の量を調べるために、2002年と2005年に発生したガンマ線バーストGRB 020819BとGRB 051022の母銀河をアルマ望遠鏡で観測しました。その結果、二つのガンマ線バーストの母銀河で分子ガスと塵が発する電波の検出に世界で初めて成功しました。

また、アルマ望遠鏡の高い解像度(視力)により、GRB 020819Bが属する銀河では分子ガスと塵の分布が大きく異なることもわかりました。分子ガスは銀河の中心に多く分布しており、塵はガンマ線バーストが発生した場所に多く存在していたのです。そしてガンマ線バーストが発生した場所では、分子ガスに対する塵の量が通常の環境よりも10倍以上多くなっていました。ガンマ線バーストが発生した銀河における分子ガスと塵の空間分布を明らかにしたのも本研究が初めてです。

GRB 020819Bの母銀河の観測結果。左と中央はアルマ望遠鏡による観測結果で、分子ガスが放つ電波の強度分布(左)と塵が放つ電波の強度分布(中央)の図。右はジェミニ北望遠鏡による可視光観測画像。画像中央上にある十字がガンマ線バーストの発生位置を示しています。(Credit:廿日出文洋(国立天文台)、ALMA (ESO/NAOJ/NRAO) )

詳しい研究内容について

塵の向こうの巨大爆発 -アルマ望遠鏡で探るガンマ線バーストの発生環境-

書誌情報

[DOI] http://dx.doi.org/10.1038/nature13325

B. Hatsukade, K. Ohta, A. Endo, K. Nakanishi, Y. Tamura, T. Hashimoto & K. Kohno
"Two γ-ray bursts from dusty regions with little molecular gas"
Nature 510 pp. 247-249 (12 June 2014)

掲載情報

  • 京都新聞(6月12日 26面)および毎日新聞(6月19日 15面)に掲載されました。