研究者情報
研究者名
藤見 俊夫
概要
災害の危険性を知識として理解していても、それが自分の身に起こり得ることとして実感するのは容易ではありません。近年、こうした課題に対応するため、コンピュータグラフィック(CG)動画やVR(仮想現実)・AR(拡張現実)を活用し、災害の状況を疑似体験できる形で伝える取り組みが広がっています。京都大学防災研究所の藤見俊夫准教授らの研究グループは、大阪市在住の1,000人を対象に、水害を体験したように感じられるCG動画とハザードマップ等の水害地図を比較しました。その結果、動画は地図よりも、避難計画や備蓄などに取り組もうとする「備え意図」を統計的に有意に高めました。心理的な経路の分析では、動画に対する情動的な反応が、水害に関する危険認識、自分事としての意識、備え意図を高めることが示唆されました。さらに、別の45人を対象としたfMRI(機能的磁気共鳴画像法)実験では、動画に対して、危険の検出や情動に関わる扁桃体が地図よりも強く反応しました。これらの結果は、仮想体験型のCG動画が、地図による説明とは異なる情動的・直感的な情報処理に働きかけ、人々の主体的な備えを後押しする可能性を示しています。本研究成果は、2026年11月4日(UTC)に国際学術誌「Risk Analysis」に採択されました。
(出典:Fujimi et al., 2026、CC BY 4.0、改変)
研究者のコメント
「一人称視点のCG動画やVR・ARなどの体験型情報と、地図やグラフなどの記述型情報では、脳の情報処理の仕方が異なることが私達の先行研究で示されています。今回の研究から、体験型情報による情動的・直感的な反応が、災害の危険を実感し、備えを考えるきっかけになる可能性が見えてきました。今後は、危険を『実感する』ための体験型情報と『理解する』ための記述型情報を上手に組み合わせ、実際の防災行動につながる情報提供を目指したいと思います。」(藤見俊夫)
【DOI】
https://doi.org/10.1111/risa.70407
【書誌情報】
Toshio Fujimi, Takanori Kochiyama, Wataru Sato, Masahide Watanabe (2026). Virtual Flood Experience Enhances Preparedness Through Emotional and Neural Engagement. Risk Analysis, 46, 11, e70407.
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