レム睡眠行動障害で萎縮する脳幹の神経核―死後脳MRIアトラスで萎縮部位を特定―

ターゲット
公開日

研究者情報

概要

 京都大学大学院医学研究科 廣瀬正和 特定研究員、花川隆 教授らの研究グループは、通常のMRIで脳幹の小さな神経核の位置を調べられるアトラスを開発し、レム睡眠行動障害で萎縮がみられる部位を見いだしました。レム睡眠中には本来、全身の筋肉が脱力して体が動かないようになっていますが、レム睡眠行動障害という病気ではこの脱力が起こらなくなります。また、この病気のある方の多くはのちにパーキンソン病などを発症します。この病気は脳幹に原因があると考えられてきましたが、脳幹のどの部位が傷むのかは不明でした。

 そこで、亡くなった方の脳10例のMRIから詳細な解剖図(アトラス)を作り、これを用いてこの病気のある方98人と健常高齢者114人のMRIを解析しました。その結果、背外側被蓋核の腹側(LDTgV)が最も強く萎縮していました。LDTgVの神経細胞にはマウスでレム睡眠を担う細胞と同じタンパク質が豊富にみられ、LDTgVはヒトでレム睡眠に関わる部位の候補と考えられます。この成果は、パーキンソン病などの早期発見の手がかりになると期待されます。本研究成果は、2026年10月8日に英国の国際学術誌Brain Communicationsにオンライン掲載されました。

画像
""
死後脳MRIから作った脳幹のアトラスを用いてレム睡眠行動障害のある方のMRIを解析し、萎縮した背外側被蓋核の腹側部(LDTgV)を特定しました。
図:廣瀬正和(Hirose et al., Brain Communications 2026 のgraphical abstract、CC BY 4.0)

研究者のコメント

「脳を提供してくださった方々とそのご家族ならびにMRI検査にご協力いただいた皆さまに心より感謝いたします。提供していただいた脳から得られた知見をもとにMRI検査の画像を解析することで、レム睡眠が障害される仕組みをヒトで確かめる手がかりが得られました。今後も亡くなった方の脳と生きている方の脳を結びつける研究を積み重ね、神経疾患の早期発見につなげていきたいと考えています。」(廣瀬正和)