山口県美祢市の「秋吉台」で世界最大のナガコムシを発見・命名―京都大学・美祢市観光政策課による研究成果―

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概要

 京都大学理学部/大学院理学研究科の動物系統学研究室(中野 隆文 准教授)と美祢市観光政策課で作る研究グループは、秋吉台(山口県美祢市)の洞窟に生息するナガコムシが新種であることを発見し、国際学術誌「Zoological Science」誌上で、和名「アキヨシホラアナナガコムシ(学名:Pacificampa dodecas Yokogawa, Murakami, & Nakano, 2026)」と命名する論文(※)を発表しました。

 アキヨシホラアナナガコムシは、ユネスコ世界ジオパークに認定されている日本最大級のカルスト地域「秋吉台」の複数の洞窟から、美祢市観光政策課の村上 崇史 環境保全専門員によって採集されたものです。中野 隆文 准教授・横川 智之 学部学生・村上 崇史 専門員の研究グループによって新種として記載され、学名はPacificampa dodecas、和名は、生息地の「秋吉台」にちなみ、「アキヨシホラアナナガコムシ」と命名されました。

 ナガコムシ科は、昆虫の中でも原始的な特徴を多く有する「コムシ目」に含まれるグループで、腹部末端に2本の細長い尾角をもちます。主に土壌中や地下環境に生息しています。Pacificampa属のナガコムシは東アジアに広く分布しますが、本州からの正式な記録はありませんでした。秋吉台で採集されたナガコムシは形態から他の種とは明確に区別でき、遺伝子解析の結果も未知の種であることを示したので、今回、新種として記載されました。また、本種は触角と尾角を除いた体長が最大13mmあり、これまで最大と考えられていた九州北部の地下環境に生息するPacificampa daidarabotchiを上回る、ナガコムシ科の世界最大種であることが明らかになりました。

 今回の発見は、ナガコムシ科全体の分類体系にも一石を投じるものとなりました。遺伝子解析の結果、Pacificampa属は土壌性のクワヤマナガコムシ属(学名:Metriocampa)と系統的に近い関係にあると推定されました。一方、ナガコムシ科に含まれる「ナガコムシ亜科」と呼ばれるグループが、異なる複数のグループに分かれる可能性が示されました。これは、ナガコムシ科における分類体系の見直しが必要であることを意味しており、本種の発見は分類学的にも重要な手がかりを与えるものとなりました。

 本種は秋吉台の洞窟に広く生息する真洞窟性動物であり、その存在は少なくとも1953年には知られていましたが、分類学的研究は行われず、学名のない状態が続いていました。それから70年以上を経て、今回、新種として記載されるに至りました。

 秋吉台は約12km×8kmの広がりを持つ石灰岩地域で、その地下には450以上の洞窟が存在します。これらが作る複雑な洞窟網には、地表とは異なる特殊な環境に適応した洞窟性動物による固有の地下生態系が形成されており、1920年代から多くの生物学的研究が行われてきました。近年の遺伝子解析技術の飛躍的進歩や洞窟探検の進展による調査範囲の拡大などを背景に、秋吉台ではカゲキヨツメジムカデやアカツカメクラヨコエビといった洞窟性動物の新種記載が相次いでいます。今後も分類学的研究の更なる進展によって、多くの未知の生物が発見され、新種として記載されることが期待されます。

 本研究成果は2026年10月9日、オンライン上で公開されました。

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アキヨシホラアナナガコムシ 撮影:村上崇史(2021年9月4日、秋吉台「大久保の小穴」)

(※)秋吉台産Pacificampa属(ナガコムシ科)の新種、および本属の系統的位置【原題:A New Species of Pacificampa (Diplura: Campodeidae) from Akiyoshidai, Honshu Island, Japan, and the Phylogenetic Position of the Genus】