研究者情報
研究者名
Yoshimitsu Takada
研究者名
渡辺 勝敏
概要
私たちの身近で広くみられる「普通種」は、幅広い環境を利用できる「ジェネラリスト」、いわば「なんでも屋」とみなされてきました。一方、ジェネラリストは、特定の環境では、その環境に適応した「スペシャリスト」に劣ると考えられています。それでは、普通種はなぜ多様な環境で繁栄できるのでしょうか?
京都大学大学院理学研究科の高田喜光 博士後期課程学生、渡辺勝敏 同教授、滋賀県立琵琶湖博物館の田畑諒一 主任学芸員らは、関東平野に広く分布する淡水魚クロダハゼを対象に、河川など水の流れがある「流水域」と、ため池や湖などの水の流れが弱い「止水域」にすむ集団の形態・行動・遺伝的特徴を比較しました。その結果、流水域と止水域の集団は、それぞれの環境に適応した形態や行動を示す一方、遺伝的なまとまりは、生息環境ではなく、主に地理的な近さを反映していることがわかりました。また、近接する流水域と止水域の集団間では、現在も遺伝的交流があることがわかりました。これらの結果は、クロダハゼが関東平野の各地で、流水域から止水域へと繰り返し独立に適応してきたことを示唆します。本研究は、私たちの身近な環境に暮らす「普通の魚」の背後に、環境に応じた細やかな適応進化が隠されていることを明らかにし、そのような進化的なチューニングの積み重ねによって本種の広い分布が実現された可能性を示唆しています。
本研究成果は、2026年7月11日に国際学術誌「Journal of Evolutionary Biology」にオンライン掲載されました。
クロダハゼにおける流水域から止水域への適応は関東平野の各地で何度も独立して起こった
研究者のコメント
「クロダハゼは、東京23区内の公園の池にも生息する、とても身近な魚です。なぜこれほどまでに『どこでも』、『普通に』みられるのだろうと高校生のときに疑問を抱いてから、早10年近くが経ちました。真夏の関東平野を駆け回り、多くの現地の方々にご協力いただきながら集めた魚たちから、その答えの一端を示せたことをとても嬉しく思います。」(高田喜光)
【DOI】
https://doi.org/10.1093/jeb/voag058
【書誌情報】
Yoshimitsu Takada, Ryoichi Tabata, Katsutoshi Watanabe (2026). Repeated adaptation of the freshwater goby Rhinogobius kurodai from lotic to lentic environments in the Kanto Plain, Japan: morphological, behavioural, and genetic approaches. Journal of Evolutionary Biology, 39, 9, 1078-1091.