老化した細胞には、健康な状態を維持している善玉老化細胞と疾患を促す悪玉老化細胞があります。この悪玉老化細胞の抑止が健康寿命の維持に重要です。
この度、井倉毅 生命科学研究科准教授、井倉正枝 同研究員、古谷寛治 同講師らの研究グループは、アセチル化によってクロマチンから放出された動的ヒストンH2AXが、老化細胞の過剰蓄積を抑止していることを見出しました。細胞老化のマーカーであるH2AXのリン酸化によるγH2AX fociの形状のバラツキに着目した老化細胞の質を見極める機械学習解析により、この過剰な老化細胞が悪玉化していることを明らかにしました。過剰老化細胞抑制の仕組みとして、アセチル化依存的な動的H2AXは、タンパク質分解に関与する分子シャペロンVCP/p97を活性化し、リン酸化H2AXに直接結合し、γH2AX fociの形状に影響を与えるMDC1タンパク質の存在量が過剰にならないように調節することにより老化細胞の悪玉化を抑止していることが示されました。
本研究成果は、2026年1月6日に、国際雑誌「Molecular and Cellular Biology」にオンライン掲載されました。
研究者のコメント
「ゲノムDNAを細胞核内に収納する役割を担っているクロマチンの構成タンパク質であるヒストンH2AXがなぜ動的になる必要があるのか?長年取り組んできたこの課題に今回、ようやくその解決の糸口が見えてきました。ヒストンH2AXは動的になることで老化細胞が悪玉化するのを抑制し、 健康寿命の維持に貢献することがわかり、とても嬉しく思います。」(井倉毅)
【DOI】
https://doi.org/10.1080/10985549.2025.2596729
【書誌情報】
Masae Ikura, Kanji Furuya, Yasunori Horikoshi, Satoshi Tashiro, Takuma Shiraki, Tsuyoshi Ikura (2026). Acetylation-Dependent Histone H2AX Exchange Suppresses Pathological Senescence via MDC1 Degradation. Molecular and Cellular Biology.