いつでもどこでもできる“ゆる”定点調査―市民科学の大規模鳥類群集データ収集の促進―

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 久野真純 情報学研究科助教(現:広島大学助教)は、鳥類定点調査における従来の厳しいルールを緩和させ、日常生活や旅行の合間に実施できる「“ゆる”定点調査」を提案しました。本研究では、場所・時間・調査点間距離のしばりを緩め、都市から農村、山地、人為改変環境まで幅広い景観で鳥類群集データを収集する方法を検討しました。とくに、生活圏や観光地、通勤・通学路など従来対象外となりがちな場所を積極的に調査に組み込むことで、空間的・時間的範囲を拡大することが可能となります。さらに、距離や時間の制約をなくすことでサンプルサイズを増やしつつ、統計的補正により群集比較の信頼性を確保する枠組みを紹介しました。早朝の調査に限定されない柔軟な時間設定や短時間化することで、調査参加者の負担を軽減し、市民科学の裾野拡大にもつながります。収集されたデータは、都市や人為改変環境における生物多様性の空間パターンや季節変動の解析に活用でき、緑地政策や都市設計に向けた科学的根拠の強化が期待されます。

 本研究成果は、2025年9月25日に、国際学術誌「Ecology and Evolution」にオンライン掲載されました。

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広島県東広島市で、自宅から広島大学の職場へ通勤する途中に行った、「“ゆる”定点調査」風景の一例(京都大学在籍時は宇治市の自宅から京都市の職場への通勤時も同様に実施)。こうした調査は計画的でなく、思い立ったらいつでもどこでも実施可能。(撮影:久野真純)
研究者のコメント
「私は朝早く起きての調査がとても苦手です(繁殖期には日の出時間に間に合うよう午前3時30分に起床)。そこで、従来の厳しいルールに縛られず、遅い時間帯や、日常・旅行の合間に鳥を観察・記録することで、(自分に甘い、怠惰な)“ゆる”調査を続けてきました。思い立った場所と時間で、いつでもどこでも定点調査を行い、負担なく楽しみながらサンプル数と調査範囲を拡大しています。現在、このような大規模生物多様性データを活用し、共同研究や研究室(広島大学先進理工系科学研究科)に参加いただける方も募集しています。」
研究者情報
研究者名
Masumi Hisano
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1002/ece3.72176

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/297701

【書誌情報】
Masumi Hisano (2025). Facilitating Large-Scale Bird Biodiversity Data Collection in Citizen Science: ‘Relaxed’ Point Counts for Anytime, Anywhere Monitoring. Ecology and Evolution, 15, 10, e72176.

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