久野真純 情報学研究科助教(現:広島大学助教)は、鳥類定点調査における従来の厳しいルールを緩和させ、日常生活や旅行の合間に実施できる「“ゆる”定点調査」を提案しました。本研究では、場所・時間・調査点間距離のしばりを緩め、都市から農村、山地、人為改変環境まで幅広い景観で鳥類群集データを収集する方法を検討しました。とくに、生活圏や観光地、通勤・通学路など従来対象外となりがちな場所を積極的に調査に組み込むことで、空間的・時間的範囲を拡大することが可能となります。さらに、距離や時間の制約をなくすことでサンプルサイズを増やしつつ、統計的補正により群集比較の信頼性を確保する枠組みを紹介しました。早朝の調査に限定されない柔軟な時間設定や短時間化することで、調査参加者の負担を軽減し、市民科学の裾野拡大にもつながります。収集されたデータは、都市や人為改変環境における生物多様性の空間パターンや季節変動の解析に活用でき、緑地政策や都市設計に向けた科学的根拠の強化が期待されます。
本研究成果は、2025年9月25日に、国際学術誌「Ecology and Evolution」にオンライン掲載されました。
【DOI】
https://doi.org/10.1002/ece3.72176
【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/297701
【書誌情報】
Masumi Hisano (2025). Facilitating Large-Scale Bird Biodiversity Data Collection in Citizen Science: ‘Relaxed’ Point Counts for Anytime, Anywhere Monitoring. Ecology and Evolution, 15, 10, e72176.