磁場を味方にするウラン超伝導の機構を解明―自らを柔軟に変化させ、耐えられる磁場の限界を2倍に―

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 超伝導はある温度以下で物質の電気抵抗がゼロになる現象です。この時、超伝導体(物質)では2つの電子が1組の電子対となり、自ら持つスピン(磁力の最小単位)を打ち消しあっています。このため、磁場は超伝導と相性が悪く、超伝導を抑制する外的要因としてのみ取り扱われてきました。応用上においても、磁場に強い超伝導状態をどのように作り出すかは、重要な課題となっています。一方、近年ウラン化合物で発見された「スピン三重項超伝導」は、従来の超伝導状態とは電子スピンの状態が異なるため、本質的に磁場に強く、高い磁場の中でも超伝導状態を保つことが知られていました。

 この度、栁瀬陽一 理学研究科教授、常盤欣文 日本原子力研究開発機構(原子力機構)研究主幹、徳永陽 同グループリーダー、淡路智 東北大学教授、佐々木孝彦 同教授、青木大 同教授らは、原子力機構が開発したスピン三重項超伝導体UTe2(ウランテルル化物)の超純良単結晶を用いて、この新しい超伝導がどのように磁場と共存し、強い磁場中でも安定して存在し続けられるのかを調べました。

 その結果、スピン三重項超伝導は磁場の中でそのスピンの状態を柔軟に変化させることができ、より強い磁場に適応した新しい状態へと自ら移行することを発見しました。それによって、超伝導状態が壊れる限界である「臨界磁場」が、従来の理論予測の約2倍、12テスラにまで達することも明らかになりました。これは、通常のネオジム磁石が0.5テスラ、医療用MRIでは3テスラの磁場であることを踏まえると、非常に大きい値です。

 この成果は、高磁場に耐えうる超伝導体開発に指針を与えるものであり、MRIや次世代加速器に必要な超伝導電磁石に使用する材料開発につながると期待されます。

 本研究成果は、2025年9月24日に、国際学術誌「Physical Review Letters」にオンライン掲載されました。

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スピン三重項超伝導の概念図。中央の矢印は磁場の方向と強さを表す。磁場中で超伝導はその状態を柔軟に変え、より強い磁場に適応した新しい状態へ自ら移行する。
研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1103/z8yx-yzdh

【書誌情報】
Y. Tokiwa, P. Opletal, H. Sakai, K. Kubo, S. Kambe, E. Yamamoto, M. Kimata, S. Awaji, T. Sasaki, D. Aoki, Y. Yanase, Y. Tokunaga, Y. Haga (2025). Self-Reconstruction of Order Parameter in Spin-Triplet Superconductor UTe₂. Physical Review Letters, 135, 13, 136502.