国際宇宙ステーションで凍結保管したマウス精子幹細胞からの子孫作出―宇宙環境のリスクと可能性を検証―

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 篠原美都 医学研究科助教と篠原隆司 同教授らのグループは、国際宇宙ステーション(ISS)で半年間凍結保存したマウス精子幹細胞からの子孫作出に成功しました。

 これまでに宇宙環境で飼育された動物に精子形成の異常が起こることが指摘されてきましたが、これがどのような原因で生じるのかについては明らかになっていません。宇宙では宇宙線による障害に加えて無重力環境がホルモンのバランスを崩すことも知られており、生体をそのまま解析するだけではその原因に迫ることは困難です。本研究グループは、凍結保存された精子幹細胞をISSで維持して、純粋な生殖細胞にどの程度のダメージがあるのかについて検討しました。半年間にわたりISSで保存した精子幹細胞は地上への帰還後に正常に分裂を開始し、不妊マウスの精巣内へ注入するとメスマウスとの交配後に正常な産仔を産むことが確認されました。本研究から、宇宙環境が精子幹細胞に与える影響は少なくとも半年の間はマウスの妊孕性に影響を与えるものではないと言えます。

 本研究成果は、2025年8月14日に、国際学術誌「Stem Cell Reports」にオンライン掲載されました。

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研究者のコメント
「宇宙環境がどのくらい安全かについて最初のデータを取ることができほっとしています。今後はどの程度の悪影響があるのかについてヒトの宇宙飛行に有用なデータを出していければ幸いです。」(篠原隆司)
研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1016/j.stemcr.2025.102602

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/296889

【書誌情報】
Mito Kanatsu-Shinohara, Takuya Yamamoto, Yusuke Shiromoto, Hiroko Morimoto, Tianjiao Liu, Tohru Yamamori, Tomokazu Yamasaki, Takashi Shinohara (2025). Germline transmission of cryopreserved mouse spermatogonial stem cells maintained on the International Space Station. Stem Cell Reports, 20, 9, 102602.

メディア掲載情報

京都新聞(2025年9月20日 1面)に掲載されました。