細胞の情報伝達を制御する足場脂質―アレスチンと膜脂質の協調作用による受容体の細胞内取り込み機構―

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 細胞はGタンパク質共役型受容体(GPCR)と呼ばれる細胞表面のセンサータンパク質を用いて、外界からの情報分子を細胞内に伝えます。この情報伝達の効率を調節する重要な仕組みの一つに、GPCRの細胞内への取り込み(内在化)による情報伝達の収束があり、アレスチンというタンパク質がその役割を担います。アレスチンがGPCRと結合する際に、機能性膜脂質であるPIP2が関わることが報告されていますが、その詳細な分子機構は不明な点が多く残されていました。

 井上飛鳥 薬学研究科教授(兼:東北大学教授)、倉本律輝 東北大学博士課程学生らの研究グループは、アレスチンがPIP2と結合する新たな部位を見出し、この結合によってGPCRをPIP2が多く含まれる細胞膜の微小領域に集積させることで、GPCRの内在化を促進させることを明らかにしました。本研究の知見は特定のタンパク質と膜脂質を標的とした創薬の新たな可能性を提唱します。

 本研究成果は、2025年8月6日に、国際学術誌「Nature Chemical Biology」に掲載されました。

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アレスチンとPIP₂の結合の解析
研究者のコメント
「本研究は『膜脂質PIP2はどのようにアレスチンと結合するのか』という先行研究で生じた疑問から出発し、アレスチンの新規脂質結合部位の発見と、想定外の膜ドメイン形成における役割の解明に至りました。従来、細胞の膜ドメインがシグナルタンパク質の機能を制御すると理解されていましたが、シグナルタンパク質であるアレスチン自身が膜ドメインを形成するという逆方向の制御機構を発見した点が特に興味深い成果です。本研究から新たな疑問も生まれ、今後の研究展開が楽しみです。」(井上飛鳥) 
研究者情報
書誌情報

【DOI】
https://doi.org/10.1038/s41589-025-01967-4

【KURENAIアクセスURL】
http://hdl.handle.net/2433/298032

【書誌情報】
Ritsuki Kuramoto, Tatsuya Ikuta, Carlo Marion C. Carino, Kouki Kawakami, Miisha Kushiro, Chihiro Watanabe, Yasunori Uchida, Mitsuhiro Abe, Yasushi Sako, Tomohiko Taguchi, Masataka Yanagawa, Asuka Inoue (2025). Membrane-domain compartmentalization of active GPCRs by β-arrestins through PtdIns(4,5)P₂ binding. Nature Chemical Biology, 21, 12, 1927-1937.